ボカロPユニット estlaboの功績を今伝える ハチ(米津玄師)、wowaka、とく(toku)、古川本舗がもたらした新たな刺激

 そして、ハチと同時期にボカロPデビューしたwowakaは、ロックバンド・ヒトリエのボーカル/ギターとしても活動していたことで人気を博していた1人だ。wowakaの産み落とした「ローリンガール」「裏表ラバーズ」をはじめとしたボカロ楽曲は、高速なビートに言葉を詰め込んだロックサウンドで、その後のボカロシーンに多大なる影響を与えたと言われている。2019年4月に急性心不全によりこの世を去ってしまったが、彼の存在、そして音楽は、2021年以降もリスナーの記憶に刻まれ続けていくことだろう。

wowaka 『裏表ラバーズ』feat. 初音ミク / wowaka - Ura-Omote Lovers (Official Video) ft. Hatsune Miku

 4人のなかではエレクトロ要素が押し出された楽曲をリリースしてきたのが、古川本舗だ。ボカロシーンを起点としながらも、楽曲のボーカリストがボーカロイドでないことも当時は新鮮だった。楽曲ごとに異なる様々なボーカリストを自身のアルバムに迎える形態をメインにしていたほか、花澤香菜、茶太などにも楽曲を提供。2015年に一旦は活動を終了したものの、昨年12月24日には活動を再開、同時に事務所兼レーベル<DONAI paris>の設立も発表。今年2月には、約6年ぶりの新曲「知らない feat.若林希望」をリリースしている。

古川本舗「知らない feat.若林希望 (Music Video)」

 estlaboの4人の共通点は、自らアクションを起こし、音楽シーンにそれまでにはなかった新しい刺激を与えてきたことにある。ボカロシーンが最盛期を迎えた2011年にリリースされた「secret base ~君がくれたもの~ (10 years after Ver.)」。ボカロPの存在が世間一般にも注目されるようになった今だからこそ、同曲のバックグラウンドを知ることで、より楽曲の持つ奥深さを感じ取ることができる。それぞれのトラウマを乗り越えようと全力で生きた『あの花』の6人が最後に輝いたように、これまでのestlaboの軌跡が『あの花』のドラマをさらに輝かせるときが来たのだ。

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