ロザリーナ、歌い続けることを誓った2年ぶりの有観客ライブ 苦しみの先に滲むあたたかさに触れた一夜

ロザリーナ、歌い続けることを誓った2年ぶりの有観客ライブ 苦しみの先に滲むあたたかさに触れた一夜

 今年3月に2ndアルバム『飛べないニケ』をリリースしたロザリーナが、5月29日、渋谷Veatsでワンマンライブ『ロザリーナ ONEMAN LIVE 2021』を開催した。新型コロナウイルスの影響もあり、有観客(同時に配信も行なわれた)でのライブは、ロザリーナ自身、約2年ぶりになるという。目の前にいる観客と一緒に空間を作り上げ、音楽をわかち合う、そんな当たり前だが、とてもかけがえのない時間を全身で味わう一夜になった。

 ドリーミーに想像力を広げていくベッドルームミュージック的なロザリーナの小宇宙を立体化するのは、ドラム、ベース、キーボード、マニピュレーターによるバンド。そして映像や照明の演出に加えて、観客が手首につけたリストバンドのライトもまた、曲とシンクロして会場を美しく染める。2ndミニアルバム『ロザリーナⅡ』からの1曲「最後の今日」でスタートし、続く2ndアルバム『飛べないニケ』からの「NEVERLAND」では夢心地なエレクトロサウンドを観客のライトが幻想的に彩っていった。ロザリーナは自ら手を上げて観客を指揮し、まばゆい光に包まれたフロアに笑顔を向けると、一層エモーショナルにスモーキーなボーカルを震わせる。

 「NEVERLAND」に続いたのは同じく2ndアルバムからの曲で「Crazy life」。ロザリーナはMCで、この曲を書き上げた背景について話をする。音楽をはじめた頃、右も左も分からない自分に対して、いろんな人が様々な意見やアドバイスをくれたこと。みんながロザリーナをよくしようという思いで意見してくれるのはわかっていたが、周囲の期待のなか、自分が何をやりたかったのかがわからなくなることもあったという。そんな葛藤や苦しみが、「Crazy life」として昇華された。静かな夜に、思いが鬱積していくような閉塞感をデジタルなビートやノイズに変え、低音のビターなボーカルと浮遊感のあるフロウで、心の内を吐露していく。歌うことでまたその狂おしい思いを追体験するのだろうか、時折、せり上がる何かを飲み込むように歌う姿もうかがえる。エレキギターを抱え歌う「真夏のスノーマン」、そしてピアノの伴奏にのせて静かに歌い上げた「涙の銀河」もまた、誰もが思わず心に飲み込んでしまう、チクチクとした小さくも鋭い痛みを、エモーショナルに表現した。

 前半で披露された楽曲のなかでも、特に力がこもっていたように見えたのは、2ndアルバムのタイトル曲である「飛べないニケ」だろうか。歌詞に合わせ、時に耳をふさいだり、胸をつかむ仕草で表情を歪めて歌う。こうありたいと望む自分と、周囲や世の中、SNSの雑音や心ない言葉に必要以上に小さくなってしまう自分とのギャップ。その埋め難く、荒く波打つような心情を、ロザリーナは素直に、そしてどこかチャーミングな希望の余韻を残して曲に仕立て、歌う。インタビューなどではあまり器用に自らの思いを口にする感じではないロザリーナだが、その歌の世界や言葉の表現は、細やかでありながら時に辛辣で、無垢な子どもの問いのように、聴き手の心をフッと軽くしてくれる感覚がある。痛み苦しみの先に、ほんのりと滲んでいるこのあたたかさが、彼女の音楽に何度も触れたくなってしまう理由でもあるのかもしれない。

 中盤は、「Good Night Mare」「Over me」「モウマンタイ」「Rolling Rolling」「moon & sun」がメドレー的に再構築され、アッパーでカラフルなサウンド、さらに映像や演出で、大きく手をふりハンドクラップで応える観客と一体感ある空間を生み出していった。その高揚感の後は「通行人B」、1stアルバム『INNER UNIVERSE』収録で現在TikTokやSNSを通じて若い世代に大きな共感を呼んでいる「何になりたくて、」、ライブ前にリリックビデオが公開された「盾」を連投。『飛べないニケ』収録の「盾」だが、そのデモは昔からあった曲だとインタビュー時に語っていた。アコースティックギターで奏でられ、力強く、叫ぶように歌うこの曲は、どこか荒削りだが、ライブという場ではとても強力なエネルギーを放っていた。

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