TWO-MIXがJ-POPシーンに残した爪痕とは? アニソン×ダンスミュージックの先駆者としての功績を辿る

アニソンとダンスミュージックを融合した先駆者

 TWO-MIXの革新性のもう一つは、打ち込みを主体にしたダンスミュージックという音楽性だ。1995年のデビュー曲「JUST COMMUNICATION」は、打ち込みのサウンドを主体としたダンスミュージックで、キャッチーなサビのメロディーで非常にインパクトがあった。当時のJ-POPシーンは、TRFや安室奈美恵などいわゆる小室ファミリー全盛期、その流れを汲んだダンスミュージックをアニソンシーンに持ち込んだことは、TWO-MIXの大きな功績の一つと言えるだろう。続く2ndシングル表題曲「RHYTHM EMOTION」もアニソンの枠を超え大ヒットとなり、翌年の1996年に開催された『第10回日本ゴールドディスク大賞』では、ベスト5ニュー・アーティスト賞を受賞した。

 ダンスミュージックという側面では、『TWO→(RE)MIX』『BPM "DANCE∞"』『BPM "DANCE∞" II』といったリミックス盤もリリースしており、「JUST COMMUNICATION」などTWO-MIXの名曲をユーロビートやトランスのアレンジで聴くことができる。現在のアニクラ(=アニソンクラブイベント)の源流の一つがここにあるかもしれない。

TWO-MIX -『BPM "DANCE∞" II』

 また、1998年にリリースされた「TRUTH〜A Great Detective of Love〜」も、ファンの間では名曲として名高い。ド派手なシンセが鳴り響くイントロとアッパーのビート、サビ前のメランコリックな展開や、空を切り裂くように放たれるボーカルが秀逸な楽曲だ。間奏では打ち込みのビートとサックスのソロが見事に融合し、「TRUTH」というタイトルの通り、真実と正面から向き合う過酷さが表現され、実に胸が熱くなる。同曲は『名探偵コナン』の5代目オープニングテーマとして起用。『名探偵コナン』のテーマソングといえば倉木麻衣、B’z、ZARD、愛内里菜などビーイング所属のアーティストが担当することは有名だ。それ以外のアーティストが起用されたのは、初代オープニングテーマの「胸がドキドキ」を手がけたTHE HIGH-LOWSとTWO-MIX、そしてVELVET GARDENのみである。

 デビュー10周年を迎えた2005年には、近藤真彦の「ミッドナイト・シャッフル」の作編曲などを手がけたジョー・リノイエをメンバーに迎えてII MIX⊿DELTA(トゥーミックス デルタ)として活動し、アルバム『dELTa ONE』などをリリース。2008年には永野のソロプロジェクト・ShiinaTactixが始動し、ボーカルに声優の小林沙苗、日笠陽子、田村睦心を迎えたアルバム『BPM151』をリリースした。

 いくつもの革新的な試みで、J-POPシーン、アニソンシーン、ダンスミュージックシーンをつなぐ架け橋として活躍し、現在も絶大な人気を誇っているTWO-MIX。その楽曲はどれも心地よく耳に響くビートとエモーショナルなボーカルで、今聴いても実に刺激に満ちている。

■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

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