スウィーティーが掲げる“女性たちへの鼓舞と連帯” ちゃんみな参加の「Best Friend feat. Doja Cat」リミックスを機に考察
スウィーティーのアーティスト性を語る上でもう一つ避けて通れないのが、いわゆる大ネタ使いである。冒頭で紹介した「My Type」ではPetey Pablo「Freek-A-Leek」、『High Maintenance』の表題曲では同じベイ・エリア出身のToo $hort「Shake That Monkey」といった具合に、彼女が思春期に多く耳にしたと思われる楽曲を含む分かりやすいサンプルを使用する。同様の手法でヒットを勝ち取ったのが、これまたToo $hort「Blow The Whistle」を使った「Tap In」である。同曲をリリースするや否や、スウィーティーはそれをバックに自ら踊る動画に 「#tapinchallenge」のハッシュタグをつけて投稿し、ムーブメントへの参加を呼びかけた。TikTokでの同ハッシュタグを含む投稿の総再生回数は本稿執筆時点(2021年5月3日)で約2億6000万回を数える。ミーガン・ザ・スタリオン「Captain Hook」をBGMにした動画のハッシュタグ「#captainhookchallenge」のそれが約1億3000万回といえば、その規模がお分かりいただけるのではなかろうか。
ただ、ここで注意しておきたいことがある。スウィーティーは、メディアが人気のある女性アーティスト同士を敵対させたがるのをまったく好まない。先述のRSFにおけるライブでも、「私たちは女として、敵対し合うんじゃなくてサポートし合うの」と宣言し、当時カード詐欺の罪で収監されていたCity GirlsのJTにシャウトアウトを捧げ、彼女らとのコラボ曲「Come On」を披露する一幕があった(※5)。彼女はその姿勢をもって、2020年10月にLA出身のシンガーソングライター=ジェネイ・アイコとのコラボ「Back to the Streets」、そして2021年に入ると早々に「Say So」などの大ヒットで知られるドージャ・キャットとのコラボ「Best Friend」をリリースする。コミカルなMVも話題となった同曲は、自身にとってこれまでで最高となるビルボード14位を記録するヒットとなった。
中国系フィリピン人の母を持つスウィーティーは、自身のアジア人としてのルーツを示すことにも意識的であるようで、「High Maintenance」においては母を“Filipino Queen”と呼んでいる。そんな彼女から、世界中に存在するアジア人ファンたちへのさらなるサプライズが待っていた。4月には日本のラッパー・シンガーソングライター=ちゃんみなと、K-POPボーカリストのJamieを招いた「Best Friend」のリミックスを発表したのだ。
他人の手に頼らず自らの手で未来を切り拓くこと、すなわち“icy”であること。女性として、黒人として、アジア人として、連帯すること。スウィーティーは自らの音楽と活動を通じて、我々にその重要性を訴え、行動を促している。
※1:https://www.redbull.com/in-en/theredbulletin/saweetie-the-saweet-life-career-profile
※2:https://www.instagram.com/p/aG6UrQK14s/
※3:https://dailytrojan.com/2019/08/21/welcome-to-icy-university-how-saweetie-went-from-usc-grad-to-rap-goddess/
※4:https://icyuniversity.saweetieofficial.com/
※5:https://twitter.com/realstreetfest/status/1160677589972733952?s=12
■奧田翔
1989年3月2日生まれ、宮城県仙台市出身。会社員、音楽ライター。
linktr.ee/03shokuda02
■リリース情報
スウィーティー「ベスト・フレンド feat. ド―ジャ・キャット、Jamie、ちゃんみな」
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スウィーティー「ベスト・フレンド feat. ドージャ・キャット」
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