スウィーティーが掲げる“女性たちへの鼓舞と連帯” ちゃんみな参加の「Best Friend feat. Doja Cat」リミックスを機に考察

スウィーティーが掲げる“鼓舞と連帯”

 2019年8月11日、米国カリフォルニア州アナハイムはホンダセンターのアリーナ内のステージ上で、スウィーティーは音楽フェスティバル『Real Street Festival』(以下、RSF)の公開インタビューに応じていた。全身青の衣装に身を包んだ彼女は、ラジオ局「Real 92.3」のパーソナリティ=Ayydéからの「あなたをみくびる人たちに言いたいことは?」という質問に対して、毅然とこう言い放った。「ビルボードのチャートを見たでしょ?」。彼女は同年3月、自身にとって2作目となるEP『Icy』をリリースしていた。同作収録の「My Type」はビルボードのシングルチャート「Hot 100」で最高21位を記録し、ダブル・プラチナムを達成している。

Saweetie on ‘My Type’ Remix, Catching Wedding Bouquet, Movie Plans + More!

 2021年にもなって「自立した女性」などという文句を誰かに対して使うのはナンセンスだと重々承知していても、そこに対するスウィーティーのこだわりの強さ、そして本人もそうした姿勢を示すことに意識的であることを踏まえ、やはり「自立した女性」としてのスウィーティーの経歴に触れておきたい。1993年7月2日にカリフォルニア州ヘイワードに生まれたDiamonté Quiava Valentin Harper(スウィーティーの本名)が初めてラッパーになりたいと思ったのは、高校2年生の時だったという(※1)。幼少期からアシャンティやアリーヤといったアーティストに憧れていた彼女は、代数学IIの時間に自らの16小節をスピットし、教室を湧かせて手応えを掴む。高校卒業後にはサンディエゴ州立大学から、切望していた名門・南カリフォルニア大学(USC)への編入を果たすと(※2)、同学ではコミュニケーション学を専攻する傍ら、別の教授の研究アシスタントを務め、自らのブランド「money makin’ mamis」を運営していたという。そんな多忙な日々の中で音楽に注ぎ込む時間がどこにあったのかと思えば、なんとサンフェルナンド・バレーにある自宅から大学まで通学する車中で、ビートを流しながらリリックを書いていたというのだから驚きだ(※3)。2016年に大学を卒業した彼女は、翌年Khia「My Neck, My Back」のビートでフリースタイルした動画をInstagramに投稿すると、これがバイラルヒット。さらに翌年、このスタジオ収録版を含むEP『High Maintenance』をリリースし、本格デビューを果たしたのだ。

Saweetie – High Maintenance (Official Audio Video)

 USCへの編入にあたり、大学当局に手紙を書いてまで、多くの学部があるドーンサイフでなくアネンバーグへの進学にこだわったというエピソードからも、彼女のアーティスト性・人間性が窺える。学者・研究者というよりは実業家タイプで、「My Type」では「私のタイプは8桁(日本円にして10億円以上)稼ぐ男」と臆面もなく言い放つ。システムへの疑念を口にする代わりに、ファンたち、特に女性たちへのメッセージを求められるごとに「自分で稼ぐんだよ」と鼓舞するリアリスト。それだけ明確な意思を持つ彼女の頭には、音楽のために教育を犠牲にする考えなど浮かばなかったに違いない。また、そんな経歴をストロングポイントと自負しているのか、事業の始め方からロクでもない男を避けるための方法までを説く講座を“Icy University”と名づけている(※4)。

Saweetie – My Type [Official Music Video]

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