ずっと真夜中でいいのに。、YOASOBI、ヨルシカーー三者三様のアニメMVに見る、新たなクリエイティブの潮流

ずっと真夜中でいいのに。『朗らかな皮膚とて不服』

 ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。、YOASOBI。YouTube世代の若者の間で人気に火がつき、社会現象化しているこれらのアーティスト。曲のクオリティの高さはもちろんだが、3組の共通項として、楽曲に合わせたオリジナルアニメーションMVが制作されていることが挙げられる。「動画師」と呼ばれるクリエイターが制作したこれらのアニメーションは、楽曲と合わせて高い注目を集めており、8月15日に放送された『マツコ会議』(日本テレビ系)には3人の動画師・Waboku、ぽぷりか、南條沙歩が出演。その制作模様について語っている。

 そもそもの動画師のアニメーションMVのルーツを紐解くと、ニコニコ動画のボーカロイド楽曲動画の文化にたどりつく。2000年代後半、初音ミクを中心とするボーカロイドの登場を皮切りに、多数のオリジナル楽曲がニコニコ動画に投稿されるようになる。それと同時に曲に合わせたイラストや動画が作られるようになり、動画師と呼ばれる存在が誕生。その文化を独自に発展させていった。

 実際、Waboku、ぽぷりかともに、同人活動としてボカロ曲のMVを制作・投稿しているし、ヨルシカ、YOASOBIそれぞれのコンポーザーであるn-bunaとAyaseもボカロP出身だ。

 そんなWabokuは、ずっと真夜中でいいのに。の「秒針を噛む」などのMVを手がけている。作画は手描きで、動画内での分量は1秒間に約12枚。鉛筆描きのようなアナログ感の強い画風が人気で、ファンタジックな世界観と人外キャラクターなどが多数登場するのも特徴だ。おとぎ話の世界のような独特の描写とカット割りの多い演出は、〈生活の偽造〉灰に潜り 秒針を噛み〉など、難解だが耳に残るフレーズがアップテンポの中で多用される「秒針を噛む」という楽曲と絶妙にマッチする。

ずっと真夜中でいいのに。『秒針を噛む』MV

 一方、ヨルシカの「だから僕は音楽を辞めた」などを担当したぽぷりかは、フル3Dでアニメーションを制作している。その手法は、3Dキャラクターを背景の中に配置し、カメラを動かしながら撮影していくというもの。淡く透明感のある絵柄と、3Dだからこその立体感、映画のようなカメラワークによって、ヨルシカの切実でドラマチックな世界観が表現されている。

ヨルシカ - だから僕は音楽を辞めた (Music Video)

 そして、南條沙歩が手がけたのはYOASOBIの「たぶん」。YOASOBIは投稿小説をもとに曲を作っているのが特徴のユニットで、「たぶん」も同名の小説を原作としている。放送された『マツコ会議』によれば、映像は伝えられる情報量が多い分、自分の解釈が前に出すぎないよう一歩引いた目線を持ち、曲に合わせて作風も変えているという南條。同居を解消した2人の切ない朝を描いた「たぶん」のMVでは、部屋の中のみを舞台として構成し、寄り添っていた幸福な記憶と、心の距離ができてしまった現在の情景を重ね合わせるような映像に仕上げている。また、楽曲のリリース前には、MVに登場する室内を360度見ることのできるティザーが公開されており、動画の中に入り込むような体験をすることができる。

YOASOBI「たぶん」Official Music Video

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる