YOASOBIが提示する“次世代の失恋ソング” 新曲「たぶん」で描かれた、別れによって成長していく恋愛のあり方
1stシングル「夜に駆ける」がリリースされるや否や、たちまちヒットチャートを駆け上がった気鋭のアーティスト、YOASOBI。快進撃を続ける彼らの打ち出した新曲「たぶん」が、2020年7月20日に配信リリースされた。
滑らかなサウンドとリズムが耳に心地いいミドルテンポナンバーの本作は、「別れの朝」をテーマとした独白形式の歌詞が静かに胸に刺さる上質な失恋ソングとなっている。時代を象徴するアーティストとしてティーン世代を中心に話題を呼んでいるYOASOBIだが、彼らの創り出す失恋ソングに、新たな境地を見た。本コラムではその、「次世代の失恋ソング」について綴っていきたい。
〈僕は何回だってきっと
そう何年だってきっと
さよならに続く道を歩くんだ〉
―YOASOBI「たぶん」より
「たぶん」は互いに惹かれ合っていた二人が別れを選んだ朝に抱いた気持ちをストレートに綴っている楽曲である。
「小説を音楽にするユニット」YOASOBIが今回楽曲制作の元とした小説では、別れを決めた二人の感情描写が、部屋の模様替えをする片方と気づかずに眠る片方、という些細な行動のみで繊細に描かれている。劇的に描かれていないぶん、別れに行き着いた理由がよりリアリティを持って浮かび上がってくる。
〈君とのロマンスは人生柄
続きはしないことを知った〉
―Official髭男dism「Pretender」より
Official髭男dismの楽曲「Pretender」の歌詞では、恋愛をしている渦中ではなくその先のビジョンが歌われている。本作でも恋愛という表舞台に立つ男女二人が終焉である別れを経験する場面から逆回転のように物語が始まり、それまでを振り返る、という構図は、失恋における欠落感・喪失感をメインに歌う楽曲とはまた違うニュアンスを帯びている。