Momが明かす、心に残っている3曲の歌詞 「浅井健一さんの歌詞はワード全てに必然性を感じる」

Momが明かす、心に残っている3曲の歌詞 「浅井健一さんの歌詞はワード全てに必然性を感じる」

 アーティストの心に残っている歌詞を聞いていくインタビュー連載『あの歌詞が忘れられない』。本連載では選曲してもらった楽曲の歌詞の魅力を紐解きながら、アーティストの新たな一面を探っていく。第6回には、シンガーソングライターのMomが登場。Momが選曲したのは、小沢健二「さよならなんて云えないよ(美しさ)」、宇多田ヒカル「虹色バス」、BLANKEY JET CITYの「ライラック」だった。Momが考える、この3曲の魅力とは何なのか。紐解いていくなかで、Momが今描こうとしているものも明らかになった。(編集部)

小沢健二、宇多田ヒカル、BLANKEY JET CITYの魅力とは? Momが明かす、心に残っている3曲の歌詞

小沢健二さんの曲は“ピリッとした美しさ”を突きつけられる瞬間が多い

――今回の選曲の中で、小沢健二さんの曲は特にMomさんの歌詞と通ずるところがあるように感じます。小沢健二さんの曲を聴き始めたのはいつ頃ですか?

Mom:いつだろう……。高校生ぐらいですかね。小沢健二さんの『LIFE』(1994年8月リリースの2ndアルバム)を聴いて「何じゃこりゃ」ってなったんですよ。

――どういったところにでしょうか?

Mom:日本語じゃないとできない音の響きがあって面白いんです。僕、日本語詞の魅力に気付いたのは結構遅くて。中学生の頃は、背伸びしたくて海外の曲ばっかり聴いてたんです。そういうのもあって、歌詞に関しては内容というより響きの方が気になることが多くて。やっぱりサウンド至上主義的な言葉ってあると思うんです。聴いていて気持ち良く感じる言葉みたいな。でも、特定の旋律にはまる美しい言葉ってなると結構絞られてくるんですよね。だから曲を聴いてても「次はこのワードがくるだろうな」って予想できたりする。それも間違いではないと思うんですけど、小沢健二さんはその予想を飛び越えてくるんですよね。いびつな乗せ方もしてるけど、それを成立させてる凄さとストレンジ感。そのバランスが凄いです。

――「さよならなんて云えないよ」を選んだ理由は?

Mom:この時期の小沢さんの曲ってお祭りっぽくて不気味だなって思うんです。突き抜けた明るさがちょっと嘘っぽい。登場人物はちゃんといるんだけどその人たちがあまり深く描かれないというか。聴いている側からすると、何かフィルターがかかってるみたいで不気味なんですよね。

ーーなるほど。

Mom:あとは、人生の中にある美しい瞬間を捉えながら、それが終わる悲しさも付随させていて。そういう“ピリッとした美しさ”というものを突きつけられる瞬間が多いんですよね。「さよならなんて云えないよ」は、それを原液で飲んでいる感じがするというか。すごい破壊力があるなって思います。特に〈左へカーブを曲がると 光る海が見えてくる〉〈僕は思う!この瞬間は続くと!いつまでも〉ってフレーズは、この曲の全てだと思います。

――宇多田ヒカルさんの「虹色バス」も選曲しています。以前インタビューで、この曲の〈遠足前夜は必ず寝不足〉が好きだと話していましたが、この一節もその瞬間の美しさや尊さを捉えていますよね。

Mom:そうですね。宇多田ヒカルさんの歌詞が好きなのも小沢健二さんのそれに近くて。宇多田さんは根がピュアだと思うんです。それは、何も知らないって意味でのピュアさではなくて、いろんなことに絶望しながらもそれでも何かをちゃんと愛してて繋がりを絶たないみたいな感じ。宇多田さんのそういう人間性も好きです。

――宇多田さんの歌詞の魅力はどういったところにあると思いますか?

Mom:宇多田さんは童心的な洞察力のある人だなって思うんです。みんなが幼少の頃に持っていたはずの“いろんなものを捉える目”を今でも持っているんだなって。小さい頃っていろんなものに対して敏感だったと思うんです。例えば、ある絵を見てすごく嫌な気持ちになったり、普通に生活している中でふと恐怖感を抱いたりとか。そういう感覚って大人になるにつれて徐々に薄れてしまうけど、宇多田さんはまだ強く持ってるんじゃないのかなと思います。とはいえ、みんなのなかにもまだその感覚はどこかで眠ってるはずで。自分が宇多田さんの歌に救われる瞬間が何度もあるのは、そういう部分なんだと思います。

――BLANKEY JET CITY(以下、ブランキー)「ライラック」も挙げていますが、元々ブランキーはよく聴かれていたんですか?

Mom:ブランキーめちゃめちゃ好きです。

――浅井健一さんの歌詞の魅力はどこにあると思いますか?

Mom:出てくるワード全てに必然性を感じるんです。自分が全然知らないような固有名詞がたくさん飛び込んできてもちゃんとリアリティをもって伝わってくる。「ライラック」の歌詞を見ても、物の質感とか色味が主人公の視点そのものなんですよね。特に「色」はその瞬間を捉えるものとして密接に関わるものですし、その描き方ってかなり重要で。浅井さんはそれを考えつかないようなワードで言い表してて凄いです。浅井さんの歌詞は自分には絶対に書けないなと思います。

――なるほど。

Mom:浅井さんの歌詞はその時代によって変遷があると思うんですけど、「ライラック」は特に“鋭いピュアさ”を感じて好きですね。宇多田さんや小沢さんにも通ずるところだと思います。

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