UVERworld、SUPER BEAVER、King Gnu……会場の大小問わずライブを続けるバンドが貫く“規模以上”の本質

 ロックバンドの進化や成長を語る時、そのバンドが立つライブ会場の規模が1つの基準として引き合いに出されることは多い。例えば東京には多くのライブハウスがあるが、ロックシーンにおいては、WWWやWWW Xでのワンマンライブを成功させたら、次は渋谷クラブクアトロやLIQUIDROOM、その次はSpotify O-EAST、EX THEATER ROPPONGI、そしてZeppへ――というように、ライブ会場の規模のスケールアップのシナリオが確立している。Zeppを満員にすることができたら、その次はホールやアリーナ、そしてドームやスタジアムへ、というように、ライブ活動の規模をさらに拡大していくバンドもいる。あくまでも一例ではあるが、「日本武道館→横浜アリーナ→さいたまスーパーアリーナ」というルートで歩を進めていくバンドは多く、近年、その先の規模であるドームやスタジアムまで進出していくバンドも増えている。

 しかし、ドームやスタジアムといった大規模会場でのライブを成功させることが活動のゴールということは決してなく、そうした偉大な通過点を経たバンドたちは、再び小中規模のライブハウスでライブを行うケース、もしくは大規模の会場のツアーと並行してライブハウスツアーを行うケースも非常に多いだろう。その理由はバンドによって様々ではあると思うが、多く挙げられるのが「自分たちの出自はライブハウスであるから」というものだろう。フェスなどでバンドが観客に向けて、「次はライブハウスで会いましょう」と呼びかけている光景を観たことがある人は多いと思う。そのことが象徴するように、自分たちの活動の原点かつ主戦場は“ライブハウス”であることを表明し続けるバンドは多い。

 大規模会場を満員にする動員力を持ちながら、ライブハウスなどの会場でも積極的に公演を行っているバンドの1つとして、SUPER BEAVERが挙げられる。筆者は、ライブハウスやホールやアリーナ、ドーム、スタジアム、それぞれの会場ごとの醍醐味があると思っている。小規模のライブハウスはステージとフロアの距離の近さが魅力の1つであるし、アリーナやドームではダイナミックなスケールの演出を堪能することができるのだ。そうしたコントラストは、そのままSUPER BEAVERのライブにも当てはまる。

SUPER BEAVER「突破口」【「[NOiD] - LABEL 10th Anniversary Special Live -」2023.10.06 Zepp Haneda (TOKYO)】

 大小様々な会場で彼らのライブを観てきた筆者の経験を振り返ると、ライブパフォーマンスを通して感じられる熱量や高揚、一体感は、会場の規模を問わず不変であるように思う。それは、彼らがどんな時も、目の前の人と向き合おうとする姿勢を貫いているゆえであると思う。

SUPER BEAVER「小さな革命」【SUPER BEAVER「都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~駱駝革命21~」 2024.3.24 atさいたまスーパーアリーナ】

 渋谷龍太(Vo)は、ライブで「自分たちだけでやる音楽ではなく、あなたと作る音楽をやりたい」「束にならずに“1対1”で音楽をやろう」という旨の言葉をよく観客に投げかける。ライブとは一方的に魅せるショーではなく、一人ひとりの目の前の“あなた”との切実なコミュニケーションの場である。彼らはそうしたライブを貫き続けていて、たとえバンドを取り巻く認知や支持がどれだけ大きく変化していったとしても、その信念は決して揺らぐことはないだろう。“1対1”のコミュニケーションを一度行うのではなく、“1対1”のコミュニケーションを一人ひとりの観客と行う。その意味で言えば、彼らのライブの本質は、ライブ会場の規模によって左右されることはないと言える。大小様々な会場でSUPER BEAVERのライブを観た経験がある人は、そうした実感を持っていると思う。

SUPER BEAVER 20th Anniversary 『都会のラクダSP at ZOZOマリンスタジアム』告知映像

 また、今年の6月に東京ドーム2Days公演が決定しており、4月5日にはさいたまスーパーアリーナで開催されたSUPER BEAVER主催の対バンライブ『現場至上主義2025』に出演したことも記憶に新しいUVERworldも、同様に大きな動員力を誇りながら、会場の大小の規模を問わず数多のライブを重ねているバンドである。UVERworldとSUPER BEAVERの共通点は多く、まず年間を通して行うライブの本数が尋常ではないくらい多いのだ。ゆえに、『現場至上主義』という企画のタイトルは、2組が共通して掲げるライブバンドとしての矜持を表しているとも言えるだろう。2組が様々な規模の会場でライブを行っているのは、ライブの本数が多いために結果的にそうなっている、と捉えることもできるが、もちろん、その1本1本が真剣勝負。これもまたSUPER BEAVERと同じように、UVERworldも、音と言葉を一人ひとりのオーディエンスに向けて送り届ける、というスタンスを懸命に貫き続けている。だからこそ、ライブを観るたびにそのストイックさに心を強く震わせられてしまうのだ。

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