LiSA、歌声の中にある牙を剥くような鋭さーー『HEY!HEY!NEO!』出演を機に考える歌の魅力
一方、バラードにおいてはどうだろうか。こちらも「THE FIRST TAKE」で歌唱している、最新シングル曲「unlasting」も踏まえたうえで掘り下げていきたい。
先ほど牙に例えた歌声の中の棘が、しゃくる際に微かなハスキーさを生み楽曲を彩っている。それはあたかも感情のひだのように作用し、リスナーの心をアップテンポなナンバーとはまた違った形で震わせ、楽曲世界へと没入させていく。もちろんそれはこの曲に限らず、壮大なバラード「シルシ」など、これまでの名曲においても共通した要素である。
さらにもうひとつ注目したいポイントが、ファルセットの扱いの巧みさ。感情の高まりを表現する前述の棘や地声の部分と組み合わせて効果的に用いることで、サウンドだけでなく歌声の面からも感情の波を際立たせ、楽曲のもつ哀しみや切なさをより引き立てている。さらにこれがライブとなれば、その瞬間だけにLiSAの中に生まれたエモーショナルさも上乗せ。いつまでも浸っていたいと感じさせるほどに惹き込まれ、聴き入ってしまう歌声を響かせるのだ。
これらの力の源となっているのは、彼女が数々重ねてきたライブ経験ではないだろうか。デビュー前には地元で結成したバンドのボーカルとしても活動し、デビュー後も自身のワンマンに加えて各種フェスやイベントなどに多数参戦してきたLiSA。その活動のなかで培ってきた力がいま彼女の地力となり、ライブ・音源の双方で数多の人々を魅了している。
今年初の新譜リリースも発表され、LiSAは新たな一歩を踏み出していく。これからも彼女の歌声の根幹にあるものを曲に応じて活かし、同時に成長を続けていくことだろう。2020年、日本のロックヒロインのひとりとしての、さらなる飛躍を期待したい。
■須永兼次(すなが・けんじ)
アニメソング・声優アーティスト関係を中心に活動するフリーライター。大学の卒論でアニソンの歌詞をテーマにするほど、昔からのアニソン好き。現在は『リスアニ!』『月刊ニュータイプ』や『TV Bros.』等に寄稿。