ミステリアスな魅力に満ちたシンガー、ACCAMERとは何者か? アニソンシーン注目の歌声を「stay night」MVから紐解く

 デビュー曲となる「Into the blue’s」、そして一連のボカロカバーでたしかな実力を示したACCAMER。7月に入ってそんな彼女のYouTubeチャンネルに、あらたなオリジナル楽曲「stay night」のMVがドロップされた。この曲は、『LISTENERS リスナーズ』放送中の4月に発売されたアニメ音楽誌『リスアニ! Vol.40.3「アニソンクリエイターズⅥ」』の付録CDに収録されたもので、作詞作曲は「Into the blue’s」に引き続きじんが担当している。軽快なエレキギターとガシャガシャとしたアコギのカッティングで幕を開けるダンサブルな一曲となった「stay night」は、じんのよりクールでニヒリスティックなサウンドが発揮された印象で、散文調のリリックが次々と耳を通り過ぎていく快感は実にらしいつくりである。そんなクセの強い、言い換えれば難易度の高い楽曲に対してACCAMERは見事に乗りこなし、自分のものにしている。「ロキ」などのカバーでも感じたことだが、ボカロ楽曲特有の高難易度の早口パートもしっかりこなすだけではなく、そのなかでも自身の声が持つクールネスという色はまったくブレない。いわば体幹の強い歌唱には改めて驚かされる。また映像作家のりゅうせーによるMVもまた秀逸で、怪しげな夜の街に蠢く少女と謎の生き物(スクォンク)や印象的なリリックがカットアップされていく、サイケデリックでスタイリッシュな仕上がりとなっており、これにACCAMERの声も実にマッチしている。

ACCAMER「stay night」Music Video

 オリジナル2曲目にして改めて新人離れした安定感というものを見せつけたACCAMERだが、こうしたさまざまな楽曲で実力を発揮できるとわかれば、ほかにどんな魅力を残しているのかと興味が尽きない。その声を知れば知るほど、ACCAMERというシンガーのミステリアスさはその色を濃くするばかりだ。

 円熟の色合いを見せた10年代を経て、20年代型アニソンというものはどんな姿になっていくのだろう。もちろん結論を急ぐ時期ではないのだけど、こうした才能がアニメーションに乗せて躍動していくのを見るにつけ、その未来が楽しみで仕方がない。同時に10年代後半から独自の活況を見せてきたネットミュージックのシーンも、20年代にさらなる進化が期待されているだろう。そのなかでACCAMERは、アニメとネットを往来しながらその歌声を響かせている。

 新たな時代に生まれた謎のシンガー、ACCAMER。しかしその謎がひとつずつ暴かれていくたびに、きっと僕たちは新しい興奮に出会えるはずだ。

■澄川龍一
アニメ音楽ライター。レコードショップバイヤー、アニメ音楽誌編集長を経て、現在はフリーとしてインタビュー/執筆、司会、ラジオ出演などで活動中。
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■配信リリース情報
ACCAMER「Into the blue’s」
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