杉山清貴、「スタジオアコースティックライブ」で示したシティポップのオリジネイターとしての本質と深み

杉山清貴、「スタジオアコースティックライブ」で示したシティポップのオリジネイターとしての本質と深み

 杉山清貴が6月26日、レコード会社のスタジオから『杉山清貴スタジオアコースティックライブ 〜in the Rain〜』を配信した。5月にリリースした約2年ぶりのオリジナルソロアルバム『Rainbow Planet』が29年ぶりにオリコンアルバムチャートでトップ10入りするなど、シティポップリバイバルの潮流とともに再び注目を集めている杉山。この日はアコギの弾き語りで、洗練と円熟を感じさせるポップソングを届けてくれた。

 4月29日に予定されていた杉山清貴&オメガトライブのコンサートは、新型コロナウイルスの影響により延期。代わりにアコースティックライブの配信を企画したものの、“3密”になるということでこれも開催できず。この日の配信ライブは、満を持しての“リベンジ”ライブとなった。

 キングレコードLINE LIVEチャンネルから配信されたライブは、アルバム『I AM ME』(2013年)の表題曲からスタート。変化し続ける社会のなかで、歌を書き、歌うことへの思いをストレートに綴ったこの曲は、シンガーソングライターとしての矜持を感じさせる記念碑的な楽曲だ。さらに「いちばん近い知り合いが一人になって。彼の姿を見て書いた歌詞です」という言葉から、新作『Rainbow Planet』の収録曲「Other Views」。“違う景色を眺めて、前に進んでいこう”というメッセージが響き、視聴者からも感動のコメントが数多く送られた。

 ペットボトルの水を持って「乾杯〜!」と呼びかけた後、ノスタルジックな夏ソング「あの夏の君と」(アルバム『OCEAN』2016年)、そして、80年代AORを継承する「雨粒にKissをして」(アルバム『Driving Music』2017年)を披露。アコギと歌だけで情景が描き、洗練されたポップスを生み出すパフォーマンスからは、デビューから37年のキャリアのなかで積み重ねてきた技術とセンスがしっかりと伝わってきた。

 この日のライブの最初のハイライトは、アルバム『MY SONG MY SOUL』の1曲目に収められた「月に口づけ」。「ミュージシャンの仲間から“この曲、自分で書いてみたかった”と言われるんです」と紹介されたこの曲は、MISIA、柴咲コウへの楽曲提供でも知られる澤田かおりが手がけたミディアムバラード。スタンダードの雰囲気を持ったメロディ、切なくも美しい恋の情景を描いた歌詞、そして、豊かな表現力をたたえたボーカルによって、画面の向こうのファンの間で大きな感動が広がっていく。

 コロナ禍における社会の変化を踏まえ、「みんな無理をし過ぎないように、“こういう生き方もできるんだな”と思ってもらえたらいいですよね」というコメントした後は、80年代のヒット曲を次々と披露。杉山清貴&オメガトライブのデビュー曲「SUMMER SUSPICION」(1983年)、本格的なブレイクのきっかけとなった代表曲「君のハートはマリンブルー」(1984年)。ライブが進むにつれて声量が増し、タイムレスな楽曲の魅力を引き出すボーカルがとにかく素晴らしい。

 2018年5月の日比谷野外大音楽堂のワンマンライブで14年ぶりに活動を再開させた杉山清貴&オメガトライブ。70年代後半〜80年代のAOR、ウエストコーストサウンドを反映させながら、日本語のポップスに結びつけた楽曲はシティポップの原点であり、その魅力は今もまったく色褪せていない。「オメガトライブでデビューできたのは財産」という言葉も印象的だった。

 ライブの後半では、アルバム『Rainbow Planet』から杉山が作曲した「もう僕らは虹を見て、綺麗だとは言わない。」をライブで初めて披露した。高柳恋が手がけた歌詞について杉山は「長く生きるというのは、物事に動じなくなることだし、分かり切ったことをいちいち言う必要もないんだなっていう」(参考)とコメントしていたが、年齢、経験を積み重ねてきたからこそ表現できる奥深い歌も大きな魅力だ。

 最後は「みんなで盛り上がりましょう」と杉山清貴&オメガトライブの最大のヒット曲「ふたりの夏物語 -NEVER ENDING SUMMER-」。「中学生の娘も歌ってます」「明日からまた頑張れます」というコメントからも、時代や流行を超えたこの曲のパワーが伝わってきた。

 「来月もしくは再来月、また配信ライブを予定してます。こういう機会を作りますので、ぜひ期待してください。それぞれの思いでがんばっていきましょう」というエールとともにライブはエンディングを迎えた。80年代の代表曲から最新アルバム『Rainbow Planet』まで、キャリア全体を網羅しながら、“2020年の杉山清貴”をダイレクトに提示。シティポップのオリジネイターとしての本質、そして、いまもなお深みを増しているボーカルをたっぷりと堪能できる貴重なライブだったと思う。

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