『BLEACH』×Aqua Timez、再び交差する青春の記憶 「千の夜をこえて」から「OLDROSE」まで…20年の軌跡

 2004年から放送が始まったTVアニメ『BLEACH』(テレビ東京系)の歴史を振り返ると、歴代主題歌を担当してきたアーティストの豪華さに驚かされる。初代オープニングテーマを担当したORANGE RANGEを筆頭に、UVERworld、いきものがかり、チャットモンチー、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ポルノグラフィティ、miwaと邦楽シーンの先端を行くバンドやシンガーが多く顔を揃えており、筆者も『BLEACH』の主題歌は売れるという潮流のようなものを当時感じていたことを覚えている。そして、『BLEACH』の洒脱でクールな世界感とドライブしていくストーリー、そしてキャラクターたちの熱量や白熱するバトルシーンと合致した世界観を描くアーティストが複数回主題歌を担当してきた。

JUMP MV /『BLEACH』×『*〜アスタリスク〜』| ORANGE RANGE

 中でも、「『BLEACH』といえば思い浮かぶアーティストは?」というアンケートを取れば間違いなく上位にランクインするであろう、本作と切っても切れないバンドがAqua Timezではないだろうか。Aqua Timezは劇場版作品を含めて4回にわたり主題歌を担当。名実ともに『BLEACH』と言えば“Aqua Timez”というイメージを確立してきた。

 初めてAqua Timezが『BLEACH』の主題歌を担当したのが「千の夜をこえて」(2006年)。メジャー2枚目のシングルとしてリリースされたこの楽曲が、『劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY』の主題歌に抜擢されたのだ。メジャーデビューして間もない段階で『BLEACH』とAqua Timezの現在まで続く関係が始まっていたことがわかる。壮大なスケールのストリングスとともに紡がれるのは、想いを伝えることの尊さ。〈好きな人に好きって伝える/それはこの世界で一番素敵なことさ〉というフレーズは、テクノロジーの発展で容易に人と繋がれるようになった今こそ、いっそう真に迫るものがある。

Aqua Timez『千の夜をこえて』Music Video(映画「劇場版BLEACH MEMORIES OF NOBODY」主題歌)

 劇場版に登場するオリジナルキャラクター・茜雫は、物語の最終盤でその存在だけでなく、人々に刻まれた彼女に関する記憶ごと消滅してしまう。どんな人とも別れがあり、いつかは忘れ去られてしまう――だからこそ人は自分の思いを伝えるのだと、Aqua Timezが「千の夜をこえて」を通して教えてくれたことだ。

 Aqua Timezがアニメ『BLEACH』本編の主題歌を初めて担当したのは「ALONES」(2007年)。爽やかなメロディとアグレッシブなバンドアンサンブルは、Aqua Timezの真骨頂。スピード感のあるザラついた映像演出が施されたモノクロ調のオープニング映像は「ALONES」のドライブする演奏にマッチしていた。「ALONES」がオープニングテーマとして起用されたのは『破面篇』の前半頃。主人公である黒崎一護の同級生であり、ともに戦ってきた井上織姫が、藍染惣右介の指示で連行されるというストーリーが描かれる。織姫は戦闘向きの能力を持たないことで、一護と肩を並べて戦えないことに強烈な劣等感を感じてしまう。一護に対する想いを伝えるシーンや、そこから生まれる嫉妬心と嫌悪感を吐露するシーンなど、この『破面篇』の前半では織姫に関する様々なエピソードが描かれた。「ALONES」における〈劣等感との和解は 簡単には叶わないさ〉や〈振り絞るように 汚れた愛を叫んでみるけれど/もどかしくて〉というフレーズは『破面篇』における織姫の姿を想起させるのだ。

Aqua Timez『ALONES』Music Video(アニメ「BLEACH」第6期OPテーマ)

 3度目の『BLEACH』とのタイアップとなったのは、第9期オープニングテーマ「Velonica」(2009年)。唸るようなベースとシンセサイザーの音像と、太志の肉薄するようにまくしたてるラップが印象的なこの曲は、『破面篇』も終盤に差し掛かった『BLEACH』の、熱量の高いバトル展開にさらなる熱を与える。

Aqua Timez『Velonica』Music Video(アニメ「BLEACH」第9期OPテーマ)

 「Velonica」の歌詞には全編にわたって『BLEACH』に関連するフレーズが登場する。〈虚ろ〉は“虚”(ホロウ)と呼ばれる悪霊を、〈仮面を剥いで〉は“虚”の仮面を剥ぐことで生まれる破面をそれぞれ彷彿とさせる。『BLEACH』の世界観を立体的に描いた楽曲だと言えそうだ。

JUMP MV /『BLEACH』×『Velonica』| Aqua Timez

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