小野島大の新譜キュレーション(年末特別編)
小野島大が選ぶ、2019年エレクトロニック年間ベスト10 ナカコーや長谷川白紙ら日本人の良作も多数
Floating Pointsもまた、ダンスミュージックとしてもリスニングミュージックとしても現代テクノの最高峰と言える最高のアルバム。最初に聴いたのは総額数千万円にも及ぶハイエンドオーディオ機器を揃えたレコード会社主催の試聴会でしたが、スタジオのシビアなモニター環境でも、ローを効かせたクラブの音響でもない環境で聴いて、このアルバムのサウンドプロダクションのバランスのとれた美しさを実感できました。聴けば聴くほど奥が深い傑作です。FKAツイッグスとクラインは、ビリー・アイリッシュとはまた異なる位相の現代シンガーソングライターの最高峰にして最先端。そして今年もっとも大きく飛躍したひとりが、サウスロンドン出身のスウィンドルでしょう。これから彼が目標とするクインシー・ジョーンズのようなプロデューサー〜アーティストになれるか注目です。いつもの通り最高だったThe Cinematic Orchestraとともに、今年もっとも数多く聴いたアルバムです。
またドローン〜アンビエントミュージックが面白かった2019年を象徴するような素晴らしい作品を出したナカコー(Koji Nakamura)、目まぐるしくカラフルなサウンドと歌詞で、完全な新世代の登場を予感させた長谷川白紙と、今年は日本人アーティストの健闘が目立ちました。
候補にあがっていたものを列記しておきます。ブラッド・オレンジ、トロ・イ・モア、H.E.R.、K Á R Y Y N、ソランジュ、、ロイル・カーナー、Bibio、フライング・ロータス、プラッド、クアンティック、Meat Beat Manifesto、トム・ヨーク、Kindness、Friendly Fires、Basic Rhythm、ブランク・マス、ジャック・グリーン、Barker、ジョニー・ヴァルなど。
■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebook/Twitter