小野島大が選ぶ、2019年エレクトロニック年間ベスト10 ナカコーや長谷川白紙ら日本人の良作も多数

FKA Twigs『Magdalene』(Young Turks)
Floating Points『Crush』(Ninja Tune)
Klein『Lifetime』(Ljin)
Swindle『No More Normal』(Branswick)
The Cinematic Orchestra『To Believe』(Ninja Tune)
Prins Thomas『Ambitions』(Smalltown Supersound)
Anthony Naples『Fog FM』(ANS)
KEN ISHII『Möbius Strip』(UMAA)
Koji Nakamura『Epitaph』(Ki/oon)
長谷川白紙『エアにに』(MUSICMINE)

 エレクトロニックな音楽、それもアルバムから選出した10枚。順不同です。なお全ジャンル対象のベスト10は『ミュージック・マガジン』誌1月号に、邦楽のみのベスト10は『MUSICA』誌1月号に、それぞれ書いていますので興味のある方はどうぞ。

 

 毎月リリースされる音楽作品はエレクトロニックなアルバムに限っても膨大な点数にのぼり、いち個人が追いきれるものではなくなっていますし、またその範囲も大きく広がっています。たとえば今年リリースされたアルバムでもっとも大きな話題となった1枚、ビリー・アイリッシュの『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』は、サウンドや、その制作の形態から言ってもエレクトロニックミュージックのひとつと言っていいと思いますが、創作の発想の基本にあるのは、案外とオールドスクールなシンガーソングライターと同じ根っこにある気がしています。内容はベストに相応しい、そして時代を画期するような素晴らしいものですが、ここでは除外しました。

 その一方で、ことにテクノ、ハウスなどダンスミュージックに関しては、アルバムのリリース点数が極端に減っています。その理由を一言でいえば、アーティストの多くがアルバムとしてリリースに必要性やメリットを感じていないからでしょう。そんな中、アルバムミュージックとしてのテクノを真正面から堂々とやってみせたKEN ISHIIの心意気、高いミュージシャンシップに拍手したいですね。素晴らしく美しく完成度の高い、ワクワクするような多幸感に満ちた最高のアルバムでした。ダンスミュージックとしてはもちろん、リスニングミュージックとしても隅々まで工夫が凝らされ、アートワークやPVまで神経の行き届いた作品です。

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