Helado Negro、アレックス・リリー……オルタナティブな音楽性を持った新世代SSW新譜5選
今回はオルタナティブな音楽性を持った、新世代シンガーソングライターの新作を中心に紹介。
まずは、フロリダ出身で現在はNYを拠点に活動するロベルト・カルロス・ラングのソロユニット、Helado Negroの『This Is How You Smile』から。これまでPrefuse 73やSavath & Savalasの作品に参加し、ジュリアナ・バーウィックとOmbreというユニットを結成するなど様々な場所で才能を発揮してきたラング。電子音楽系レーベル<RVNG Intl.>からリリースされた本作では、アンビエントなシンセを下地にして、打ち込みやギターなど必要最小限度の楽器を加えたミニマルなサウンドに、呟くような歌声が乗る。音の余白や歌の間合いが絶妙だ。ロベルトはエクアドルの血を引いていて、メロディに南米のエキゾチックな香りが漂うのも特徴のひとつ。デヴェンドラ・バンハートや細野晴臣にも通じるトロピカルダンディーぶりを発揮したアルバムだ。
これまでUn Blonde名義で活動してきたモントリオールのシンガーソングライター、ジャン・セバスチャン・オーデットが<ANTI- Records>に移籍。名前をイヴ・ジャーヴィスに改名して発表したのが『The Same But By Different Means』だ。宅録っぽい生々しいサウンドのなか、キーボードやハーモニカがヴィンテージな風合いを醸し出すソウルフルでフォーキーな歌。そこに奇妙なノイズやエフェクト、フィールドレコーディングした音源などを織り交ぜて不思議な浮遊感を生み出すなか、切なげなウィスパーボイスが語りかけてくる。官能的でサイケデリックな歌の世界は、レニー・グラヴィッツの魂を持ったアリエル・ピンクのようでもあり、気がつけば何度も聴いてしまう中毒性が高い一枚。
LAのシンガーソングライターで、ベックのバンドでキーボーディストとしても活躍するアレックス・リリー。1stアルバムとなる本作は、彼女の親友のイナラ・ジョージ(The Bird and the Bee)が立ち上げたレーベル<Release Me Records>からのリリースだ。ゲストには、ビートミュージック界のベテラン、Daedelusやジェイコブ・バーコヴィッチ(The Voidz)らが参加。エレクトロニックなサウンドをベースにしながら、クラシックからダンスミュージックまで様々な要素が盛り込まれていて、ロマンティックなメロディと実験的なポップセンスが絶妙なバランスで融合。ベックやSt. Vincentに通じるアート色の強いサウンドを生み出している。