Mr.Childrenは渇望こそが推進力に ロックバンドとしてさらなる覚醒果たした『重力と呼吸』ツアー

Mr.Children『重力と呼吸』ツアーを見て

 アルバム『重力と呼吸』のなかで、もっとも瑞々しいロックチューン「海にて、心は裸になりたがる」からライブは後半へ。「擬態」「Worlds end」とアッパーチューンを続け、骨太なバンドサウンド、濃密な感情を含んだボーカルで観客の心と体を揺らす。そして、本編ラストの楽曲の前に桜井は、ゆっくりとオーディエンスに話しかけた。

 デビュー25周年だった去年は、自分たちの音楽を聴き、ライブ会場に足を運んでくれる人たちに感謝の気持ちを伝えたいと思って過ごしていたこと。それが終わり、「次に何をしよう?」と考えたとき、まだまだやりたいことがあると気付いたこと。

「僕らには理想があって、憧れがあって、夢があって。それに一歩ずつでもいいから近づきたい。そんなふうに思って、新しいアルバムの制作に入りました。この会場の多くの人がティーンネイジャーではないけど(笑)、僕らと同じように夢を持って、憧れを持ってもいいと思っています。みなさんにも僕らにも、まだまだ伸びしろがあるんだと考えています」

 そんな言葉に導かれたのは、アルバムの最後に収録された「皮膚呼吸」。“それで満足ですか?”という心の声が聴こえ、反発や葛藤を感じながらも、新しい理想に向かって進み始めるーーこの曲が描き出すストーリーは、そのまま今回のツアーにつながっていたと思う。

 アンコールは「here comes my love」からスタート。「風と星とメビウスの輪」、「この季節にぴったりの曲です」と紹介された「秋がくれた切符」をじっくりと歌い上げ、ラストはアルバムの1曲目に収められた「Your Song」。“ワン! ツー!”というJENのカウント、桜井の強烈なシャウトから始まるこの曲がもたらしたカタルシスは、このツアーの充実ぶりを証明していた。

 これまで築き上げてきた巨大な成功に満足することなく、さらなる高みを求め続けるMr.Children。まだ進める、もっとやれる。メンバーのなかにある渇望こそが、このバンドの推進力であることを改めて実感できた圧巻のステージだった。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

Mr.Childrenオフィシャルサイト

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