プロの作詞家がバンドの歌詞にアドバイス? 「ワードアドバイザー」が目指していること

作詞家がバンドの“言葉”を監修する意義

 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家やコトバライター、小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。連載第1回では、中田ヤスタカと秋元康という2人のプロデューサーが紡ぐ歌詞に、第2回では“比喩表現”、3回目では英詞と日本詞の使い分け、第4回は“風諭法”、第5回は歌詞の“物語性”について、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらった。今回は、趣向を少し変え、作詞家の立ち位置と『作詞クラブ』の今後についてじっくりと話を訊いてみた。

第1回(きゃりーぱみゅぱみゅと小泉今日子の歌詞の共通点とは? 作詞家・zoppがヒット曲を読み解く
第2回(SMAP、NEWS、Sexy Zoneの歌詞に隠れる“引喩”とは? 表現を豊かにするテクニック
第3回(ワンオクやマンウィズ海外人気の理由のひとつ? 日本語詞と英語詞をうまくミックスさせる方法
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第5回(ジャニーズWEST、山下智久、ドリカム……なぜJ-POPの歌詞には“物語”が必要なのか?

zoppのプロフィールなどが分かるインタビューはこちら

「プロの作詞家は作り方が広告のプランナー的なんです」

――今回は作詞家の立ち位置について、掘り下げていきたいと思います。zoppさんは黒猫チェルシーが2月3日にリリースする新作『グッバイ』の表題曲で「ワードアドバイザー」を務めていますが、この肩書きは「作詞家」と何が違うのでしょうか。

zopp:自分が考えた言葉が一文字も使われていなかったとしても、世界観を共有して「こういう歌詞を作ったら?」と提案し、それが何かしらの要素として使っていただいていれば「アドバイス」だという認識です。

――歌詞を実際に考えたりアイディア出しをすることと、アーティストが書いた歌詞にアドバイスすること、どちらのケースのほうが多いのでしょうか。

zopp:同じくらいですね。ひとつのテーマに対していくつかの歌詞を考えさせていただくことも、本人が書いたものを「こういう風にしてみるのはどうでしょう?」と提案させていただくこともありますね。もちろんすべてをこちらが強制するわけではなく、最終的に歌う本人であるアーティスト側にそれを受けて判断していただくという形です。

――具体的にはどのようなアーティストに対してアドバイスを?

zopp:バンドマンは自分の世界観がすごくしっかりしていて、詩的表現とかも得意な方が多く、彼らは誰にも何も言われたくないと思うのですが、そのなかには“歌うことだけが好きな人”もいるんです。伝えたいことは「キミが好き」とか「地球が平和になればいい」というくらいシンプルなのに、上手く言葉にできない人とか。そんなバンドに対して、アドバイザーとして表現したいことを丁寧にくみ取り、アウトプットのお手伝いをさせていただいています。

――なるほど。ワードアドバイザーという言葉をこれから先、どう浸透させていきたいですか?

zopp:僕は作詞家になる原点がU2などの歌詞を訳詞したことだったりして、バンドが大好きなんです。そのうえで、ポップな音楽性を持つアーティストと関わってきた自分だからこそ、バンドたちには色々な世界を見てもらいたいと思っていて。上から目線で「プロデューサー」として関わるのはちょっとおこがましいかなと感じていますし、バンドのファンにも「詞を監修している」と認識してほしいので、“ワードアドバイザー”という肩書を使わせていただきました。

――その肩書が十二分に活きるのはどういうシチュエーションなのでしょう。

zopp:タイアップ楽曲など、ある程度制約のある楽曲を制作するとき、ですかね。慣れていないと、目的地を決めていないまま書いて、ゴールまでの道のりが遠くなってしまうんです。プロの作詞家は、まずお題に沿ってデッサンをし、しっかりとゴールを定めたうえで色を塗っていきます。作り方が広告のプランナー的なんですよね。だから納期にも間に合わせるように作れる。いまは昔より、バンドマンにその技術が求められる状況なので、その部分をしっかりと伝えられればと思います。

――たしかに、バンドマンによる他アーティストへの楽曲提供が多くなったのは、プランナー的な人が増えたからともいえますね。

zopp:そうだと思います。そのぶん多方面に気を使わないといけなくなっている。本意ではないでしょうけれども、仕事だからしょうがない、周りが言っているからしょうがない、という思いもあるでしょうし。でも、タイアップ楽曲や提供曲は確実に経験値になるし、実際に関わってみて目から鱗の部分も多いと思います。

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