ワンオクやマンウィズ海外人気の理由のひとつ? 日本語詞と英語詞をうまくミックスさせる方法

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 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家やコトバライター、小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。連載第1回では、中田ヤスタカと秋元康という2人のプロデューサーが紡ぐ歌詞に、第2回では“比喩表現”に着目してもらった。第3回となる今回は、歌詞における日本語と英語の使い分けについて、バンドやアイドルなどの具体的な例も出しつつ、存分に語ってもらった。

第1回(きゃりーぱみゅぱみゅと小泉今日子の歌詞の共通点とは? 作詞家・zoppがヒット曲を読み解く
第2回(SMAP、NEWS、Sexy Zoneの歌詞に隠れる“引喩”とは? 表現を豊かにするテクニック

zoppのプロフィールなどが分かるインタビューはこちら

「ワン・ダイレクションやマドンナの歌詞を、日本人が書くこともあり得る」

――今回のテーマは日本語詞と英語詞の使い分けです。最近のバンドは英語詞をためらうことなく使っていますが、J-POP寄りのアーティストになるほど、歌詞における日本語の比率が高くなっていくイメージがあります。

zopp:バンドは海外の音楽に敬意を表しているケースが多く、そこに近づきたいという理由で英詞にしているのではないかと思います。それに、昔のバンドとくらべると、リスナー全体のITリテラシーが上がっていて、海外の人もYoutubeで日本人と同じタイミングに新曲の動画を見れたりするので、ビジネス的な意味においても、バンドをスタートする段階で世界を見据えた座組みになることも多い。そういう点では、売れる・売れないは置いておいて、世界を目指すなら初めから共通言語である英詞で歌った方が、届くスピードが速いと思うんです。

――日本語詞と英語詞をミックスする利点とは?

zopp:MAN WITH A MISSIONやONE OK ROCKが海外で受け入れられる要因のひとつには、自分たちの国内でのスタイルを、そのまま海外のフェスやライブに持って行けるということもあるでしょう。音源では日本語で歌っていたものを、ステージでだけ英語にするというのも、海外のリスナーからすれば「Youtubeでは日本語で歌っていたのに、なんで英語になっちゃうの?」となるでしょうし。国内のリスナー目線で見ても、彼らは日本語詞と英語詞をうまくミックスしていて、それがマジョリティな受け手にとっては、聴くにあたっての障壁を無くしていると思います。単純にひとりでも多くの人に聴いてほしいという思いが強いのかもしれないですね。

――動画サイトが当たり前になった世代が、メインのリスナー層だからこそ起こり得る現象なのでしょうか。

zopp:デジタルネイティブ世代のリスナーには、とくに「日本語・英語」という区別がないのかもしれません。生まれた瞬間からボーダレスな世界に生きているので、僕たち大人が若いころに思っていた対英語と、今の若者が思っている対英語の感覚がまったく違うのかも。普段触れ合う言葉も英語が多いでしょうし、パソコンに強い子はプログラミング言語にも触れたりする。そういった環境の変化が、音楽にも自然と影響を与えているのだろうなという気はします。

――英詞を書けるというスキルは、これからの作詞家にとって重要なものになってくるのでしょうか。

zopp:そうですね。これから作詞家を目指す方にとっては必要だと思います。SEKAI NO OWARIが今度のシングルで海外のプロデューサーと共作で英語詞を書くように、ワン・ダイレクションやマドンナの歌詞を、日本人が書くということだってあり得るのかもしれません。そういう意味でも英語が使えたほうが圧倒的に得だろうなと。

――英語で文章を書くのと、歌詞を書くのはそれぞれ使うスキルが違うのでしょうか?

zopp:そこなんです。日本人は英語を書く能力はすごく高いし、文法はしっかり守れて単語力も強いのですが、いかんせん話さないし、聞くことに慣れてない。だから言葉のリズム感が違う。たとえば、「Everything」という単語を日本語で発音すると「エ・ブ・リ・シ・ン・グ」と6個の音になりますが、英語で発音すると「E・very・thing」の3つなんです。「very」を1つの発音で歌うという前提がないんですよね。しかし、ここで音取りを間違えると、クライアントにも違和感が伝わってしまうので、注意が必要です。

――他方、ダンスミュージックは英語詞のものが元来より多いイメージで、発音にも気を遣っているように思えます。

zopp:K-POPも母国語と英語詞で2パターン作っていたり、日本だとavexさんや、LDH系列のアーティストが英語詞と日本語詞を織り交ぜたダンスミュージックを展開している印象が大きいです。たとえばリズムをとるときも、「いち、にー、さん、しー」ではなく「ワン、ツー、スリー、フォー」と指導することが多いですし、練習の際に習作とするのはたいてい海外の楽曲です。その理由としては、元々英語がメロディに乗せる言葉として相性が良く、抑揚がはっきりしているので跳ねや伸びなど、メロディとメロディの隙間の音が鳴っていない部分の発音に適しているという点が挙げられます。一方、日本語は抑揚が少ないですし、言葉も平坦で跳ねたり伸びたりしない。そのため、普段話しているのとは違う感覚になってしまいます。そのため、メロディを活かす事を考えると、英語が増えてきてしまうのでしょうね。

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