『ガルクラ』『ヨルクラ』『数エール』『ぼざろ』 表現者の苦悩を描くアニメが大ブームに

表現者の苦悩を描くアニメが大ブームに

 絵を描くこと。アニメーションを作ること。歌を唄うこと。音楽を奏でること。世の中にはさまざまな表現があって、大勢の表現者たちが挑んでは作品を生み出し、受け取る人たちに感動を与えている。そうした循環から浮かぶのが、何のために表現を続けているのかという問いだ。褒められたいから? 誰かを喜ばせたいから? 表現したいからといった衝動も含まれるその答えについて、考えるきっかけをくれるアニメが今、劇場やテレビに幾つも登場して、クリエイティブな活動に関心を持つ人たちに強い刺激を与えている。

 絵を描くことに自信を失っていた少女と、アイドルを辞めた少女が出会う『夜のクラゲは泳げない』。父親から逃げるように上京して来た少女が、ロックバンドを組んで歌い始める『ガールズバンドクライ』。MVを作り始めた少年が、路上で耳にした女性シンガーの歌に感動してMVを作りたいと申し出る『数分間のエールを』。どれも、何かを表現しようとして頑張り、時に挫折を味わいながらそれでも進んでいこうとする表現者たちを描いたアニメ作品だ。

『夜のクラゲは泳げない』

オリジナルTVアニメ「夜のクラゲは泳げない」本PV | 4月6日放送開始

 『夜のクラゲは泳げない』の場合は、自分の絵を否定されて描けなくなっていた光月まひるが、元アイドルで今は覆面アーティスト「JELEE」として活動する山ノ内花音から認めてもらったことで自信を取り戻し、止まっていた時間が動き出す。まひるが絵を描き花音が唄い、そこに、VTuverとして活動していた真昼の幼なじみの渡瀬キウイや、ピアニストとして期待されていた高梨・キム・アヌーク・めいが、映像編集や作曲の才能を持ち寄ることで、「JELEE」の人気は高まっていく。

 ネット時代ならではのサクセスストーリーとも言えそうな展開だが、まひるが自分の絵をカバーした有名絵師が賞賛を浴びる状況に悔しさを覚えるのも、送り手と受け手がダイレクトにつながりやすいネット時代ならではのエピソード。アナログ時代以上に誰かと比べられやすい表現者としての苦悩を乗り越えるために、まひるがもっと上手くなろうと頑張る展開が、同じような悩みをかかえていた人に立ち止まらず、諦めないで進み始める勇気を与える。

『響け!ユーフォニアム3』

TVアニメ『響け!ユーフォニアム3』PV第2弾

 同じことは、武田綾乃の小説を原作にしたTVアニメ『響け!ユーフォニアム3』にも言える。弱小だった北宇治高校の吹奏楽部に入った黄前久美子が、部活動を通して様々な人と出会い、音楽に向き合っていく成長ストーリーを描いたアニメシリーズの最新作。部長になり3年に進級した久美子が、さまざまな問題に直面して思い悩む。

 とりわけ吹奏楽の名門校から転校してきた、同じ3年でユーフォニアム担当の黒江真由との関係は、音楽というものに対する久美子のスタンスに、改めて固い芯のようなものを通すことになる。吹奏楽コンクールの関東大会でソロパートを真由に奪われた久美子が抱いた葛藤は、どれほどのものだったのか。上手い真由が吹いて全国大会で金賞を獲得できれば部活動としては大成功。けれども、自分が吹いて金賞を取り、共に歩んできたトランペットの高坂麗奈に認められたい気持ちは捨てられない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる