『花束みたいな恋をした』にも登場した『宝石の国』完結へ アニメ第2期に高まる期待

 第2期が期待されているアニメシリーズを挙げればきりがない。市川春子の漫画が原作の『宝石の国』はその筆頭であり、2017年末のアニメ第1期放送終了からずっと、第2期を待ち望んでいる人も少なくないだろう。4月25日発売の『月刊アフタヌーン』6月号に掲載予定の第108話で漫画が完結することになり、作品人気が盛り上がりを見せる中でアニメの再開を求める動きが起こりそうだ。

 2012年10月に『宝石の国』は連載が始まり、2013年7月に単行本の第1巻が出た時には、これは凄い漫画が現れたと誰もが思った。映画『花束みたいな恋をした』で菅田将暉が演じる麦と有村架純が演じる絹が、“2人で読んで感動する漫画”として登場したのも印象的だ。

 そして、2017年10月にTVアニメ『宝石の国』の第1話が放送された時、これは凄まじいアニメが登場したと誰もが思っただろう。市川春子が描く繊細で美しい世界と登場するキャラクターたちを、3DCGによって見事に再現した上にスピーディーなアクションもしっかりと表現していたからだ。

 海へと没した生命に微生物が入り込むことによって無機物の結晶となり、それが集まって意識を得て人の形となって立ち上がる。それぞれが宝石や鉱物の名前を得て、金剛という名の僧侶のような恰好をした者の下で手に武器を持ち、月から宝石たちをさらいに来る不気味な月人たちを相手に戦ったり、日々を記録する仕事についたりする。

アニメ『宝石の国』はすべてが宝石のように美しい 音楽と映像が織りなす緻密な世界

市川春子の人気コミック原作アニメ『宝石の国』が、すごい。登場キャラが人間のような姿をした「宝石」たちという独創的な世界観や、3D…

 そうした展開の中で、主人公のフォスフォフィライトはどこか落ちこぼれといった雰囲気で、少しの衝撃で砕けてしまう弱さゆえに月人との戦闘には出られず、自分に何ができるのかを探していた。そんなある時、なめくじのような姿のアドミラビリス族の王によって飲み込まれ、吐き出され連れられて海へと引き込まれ、足を奪われ代わりにアドミラビリス族の殻を与えられて地上へと戻る。その後も海に落ちて両手を失って、金と白金の合金に置き換えられることで、不思議な強さを発揮するようになっていく。

 市川春子による漫画は、そうした展開が美形ぞろいの少年たちによって繰り広げられ、読む人の目を引きつけた。加えてTVアニメは、黒沢ともよが演じるフォスフォフィライトや、小松未可子が演じるシンシャ、ダイヤモンドを演じる茅野愛衣にボルツ役の佐倉綾音と超人気声優たちが出演し、中性的な声を発してキャラクターたちへの関心を引きつけた。先生と呼ばれ宝石たちから慕われる金剛を演じる中田譲治も、渋さが炸裂した演技で安心感を与えてくれた。

アニメスタジオ・オレンジの功績

TVアニメ『宝石の国』本PV

 それだけではない。日常のどこかドタバタとしたシーンはコミカルに、月人との戦闘シーンはスピーディーでスタイリッシュに描いて楽しませてくれた。驚きだったのは、それらが3DCGによって制作されていたことだ。2Dによる作画と見間違えるようなルックを持ちながらも、宝石が下となったキャラクターたちに相応しいキラキラとした色彩と、複雑な形状をしっかりと描画して、その時点での3DCGアニメの到達点を感じさせてくれた。

 制作したオレンジは、後に板垣巴留の漫画を原作にした『BEASTARS』で動物がベースとなったキャラクターたちを表情豊かに描き、内藤泰弘の漫画が原作の『TRIGUN STAMPEDE』で原作の漫画とも、2D作画のアニメシリーズとも違った独特の雰囲気を持った『トライガン』の世界を見せてくれた。そんなオレンジの実力が、最適の作品を得て存分に発揮された作品が『宝石の国』だった。

 朴璐美が声を当てたパパラチアという超絶イケメンキャラが232年ぶりに目を覚まし、悩むフォスフォフィライトに助言を与えてすぐに眠りについてしまうエピソードを経て、特に変化がなさそうな日常の中で、何かが動きだそうとしていると予感させる第12話「新しい仕事」をもって、アニメ『宝石の国』はいったん終わる。その先の展開を原作の漫画で読んでいない人には、ラストシーンで金剛と対峙するフォスフォフィライトがその後に何をするのか、そして物語の世界に何が起こるのかといったワクワク感を今も抱き続けているだろう。

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