非術師視点の『呪術廻戦』 被害者多数の「渋谷事変」から考える一般社会と呪術界の距離感

“非術師”視点で見る『呪術廻戦』の世界観

 “スクランブル交差点で、大量の人間が吸い込まれていった”。その現場を目撃しない限り、理解の追いつかない事態が渋谷ハロウィーンで起きている。『呪術廻戦』「渋谷事変」がいよいよ開幕した。

 与幸吉が残念ながら真人に及ばず、大健闘したのちに殺された日からざっと10日後の2018年10月31日の渋谷、時刻は19時。東急百貨店東急東横店を中心に半径400メートルの帳が降りた。同刻の渋谷の状況はアニメオリジナルの描写をふんだんに取り入れて描かれていて、酒を一気飲みする若者、実際に2018年のハロウィンで話題になったトラック横転騒ぎの姿が映された。原作漫画では五条悟が到着してからの様子しか描かれなかったが、アニオリのように帳が降りる前の渋谷を描くことで、より“非術師(被害者)の数”を生々しく感じられるようになっている。だからこそ、ここで一度、非術師視点で『呪術廻戦』の世界観をおさらいしておくのもいいかもしれない。

※本稿にはアニメ『呪術廻戦』最新話までのネタバレが記述されています。

 これまでの呪術廻戦は、呪術師のコミュニティにとどまる範疇の物語が多く、このように“一般社会の中の呪術界”や“呪霊と非術師の遭遇”について考える具体的なエピソードが少なかった。とはいえ、これまでにも各場面に少しずつ説明されていたり描かれていたりもする。

 まず、大前提として年平均1万人を超える日本国内の不可解な死者・行方不明者数は、そのほとんどの原因が“呪い”とされている。「懐玉・玉折」では、路地裏で非術師が呪霊に殺されているところに夏油が遭遇したり、「幼魚と逆罰」では神奈川県川崎市の映画館で変死体が見つかったり、吉野順平の母親が下半身のない状態で発見されるなど、割とこのあたりの被害というものが映し出されているのだ。では、そんな遺体が見つかったとき警察はどうしているのか。それも「幼魚と逆罰」にて言及されている。

 真人の無為転変によって殺された高校生を従業員が発見し、通報。その後到着した警察が現場検証を行う様子が描かれたが、七海建人と虎杖悠仁の方が鑑識より先に現場に入ることを許された。後輩の刑事は「納得がいかない」と文句を言うが、先輩刑事は詳しいことは知らないものの遺体の状態が“人間の領分を外れている”ことを理解し、その分野の専門として呪術師の干渉を許していた。つまり、見て見ぬふりをしているのだ。この様子を踏まえると、警察側も呪霊というより“人ならざるもの”の存在は認知していて、経歴が長かったり上層部の立場だったりするほど、それを代わりに対処する呪術師や呪術界への認識があるのではないかと思う。

 実際、『劇場版 呪術廻戦 0』では夏油が起こした「百鬼夜行」の際に一般市民の被害が完了していた。これは呪術師が一般市民に呼びかけたとは考えにくく(なぜなら、呪術師は見た目だけで言えば紺色の見慣れない服を着た普通の人なので非術師は素直に話を聞かないだろう)、警察や行政が何らかの理由をもってして避難誘導をしたと推測できる。逆に今回の「渋谷事変」は呪術界にとっても不意打ちのテロだからこそ、ここまで多くの非術師が関わってきてしまうことになるのだ。

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