非術師視点の『呪術廻戦』 被害者多数の「渋谷事変」から考える一般社会と呪術界の距離感

“非術師”視点で見る『呪術廻戦』の世界観

 ちなみに実際の2018年の渋谷ハロウィーンは先述のトラック騒動を含め23名の逮捕者も出ており、渋谷区には300件を超える苦情が寄せられたと言われている。参加者はおよそ80万人から100万人だったとのことで、“歴代最悪”だった2018年を踏まえ、渋谷区は翌年2019年に警察官を100人以上配置するなど予算1億300万円を計上している。『呪術廻戦』の世界でも、多数の死者が発生しているため2018年の渋谷ハロウィンが“歴代最悪”であることに変わりはない。

 帳が降りる瞬間、「何あれ?」と指をさす女性が映されていたのも良い描写だった。『呪術廻戦』の世界観において興味深いのは、呪霊の存在が呪術師にしか視認できないものではない、ということだ。死に際や特殊な環境、そして普段から呪力が微量でもある人(一般的に言い換えると“霊感が強い”といったところだろうか)は見えるようになっているが、多くの場合は呪いが見えない。例えば“夏油”と漏瑚たちがファミレスに行った時、呪霊の姿が見えないスタッフが「1名」と案内したのに対し、他のスタッフが“見えてはいないが嫌な気配を感じていた”ように、人それぞれなのも割とわかる話だからこそ、すんなり世界設定を理解しやすい。この現実との地続きさが、『呪術廻戦』の世界をより身近に感じられる要因の一つだろう。

 もし、自分があの帳に閉じ込められてしまったら。見えるのか、見えないのか。見えずとも危険を察知して逃げることができるのか、オープニング映像で真人が行っていたような大量殺戮に巻き込まれてしまうのか。そんなことを考えながら、アニメの中で非術師がどんな目に遭うのか見守るのも一興である。

■放送情報
『呪術廻戦』第2期
MBS/TBS系にて、毎週木曜23:56~放送
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、中村悠一、島﨑信長、櫻井孝宏、諏訪部順一原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史、小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
「渋谷事変」オープニングテーマ:King Gnu「SPECIALZ」(Sony Music Labels)
「渋谷事変」エンディングテーマ:羊文学「more than words」(F.C.L.S.)
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp

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