映画館で笑う、話す、スマホなどどこまで許される? “集中力のない大人”が増加した背景も

映画館でのマナー違反の境界線を考える

 現在、日本では劇場による「鑑賞マナー」が常に問題視されている。スマホの光や着信音、大きな笑い声など、対象とされるものは様々だ。

 こういった問題は、携帯電話が普及していなかった頃からあるが、とくにスマホの普及で圧倒的に広がったことは確かだ。

 2006年に放送された『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)のなかでは、上映中に携帯が鳴ってしまった場合のトラブルが取り上げられた。それが故意ではなく不注意だったとしても、それによって鑑賞が害されたと主張し、迷惑行為だと判断された場合には、料金の4分の1×観客人数分を請求できる可能性があるとされている。

 さすがにそこまで大事にする人はいないかもしれないが、上映中に迷惑行為をすると賠償請求の対象者となることは事実なのだ。

 こうしたトラブルは携帯に限られたことではない。大きな笑い声やスマホの光、いびき、会話なども、迷惑行為と感じる人がいたら、それも同様となり、賠償義務が発生し得るということ。

 現実的に考えると明確な線引きが難しい部分があるのだが、劇場では上映前に鑑賞マナー映像が上映されるのだから、それに従うのが“最低限のマナー”ではないだろうか。

一般常識ではなく、あくまで“劇場のルール”を遵守すべき?

 一方で、鑑賞スタイル自体が全く異なる国もある。例えばインドの場合では、実際のスクリーンを撮影した動画がYouTubeなどにあげられているが、これはインドにおいては違法行為ではない(一部は違法行為とされている国や地域の場合もある)。

 さすがに本編をまるごと撮影することは犯罪行為となるが、上映中に記念撮影をする人はごく普通に存在する。踊ったり声を出してもいいことになっていたりと、かなり自由度の高い鑑賞スタイルだ。

 ただ時代も変わってきていて、都会の人々はそういった鑑賞スタイルを恥ずかしいと感じる人も出てきているし、シネコンが普及してきたことによって、そういった鑑賞スタイル自体を見直す動きも出てきていたりもする。

 ちなみに、日本は上映中に騒いでもいいと間違って認識している外国人がいるのも事実だ。それは海外報道の一部で、日本の応援上映やマサラ上映が日本の鑑賞スタイルのスタンダードかのように誤って取り上げられていることによるものだ。

 立場が変われば、明日は我が身。インドに旅行した日本人が「インドの映画館だから撮影したり、騒いでもいい」と思っていると、知らないうちに迷惑行為と判断される場合もあるということだ。

 そのため、「海外ではみんな騒いでいる」とか「話をしながら観ている」と言ったところで、日本の劇場で適用されるわけがない。劇場が「しないで」と言ってるのだから、しないのが普通なのだが、難しい点が……ひとつある。

子どもの集中力問題と、それに対する作品上での工夫

 それは意図的ではなく、子どもが上映中に騒いでしまう場合だ。筆者も含め、小さな子どもがいる人にとっては、映画館で映画を観るというのは常にヒヤヒヤする行為でもある。

 一部の劇場では「ベイビー クラブ シアター」や「抱っこdeシネマ」のように、子どもが騒ぐことを前提とした上映スタイルもあるが、月に数回しかないし、作品も極端に限られている。

 直近の作品だと『それいけ!アンパンマン ロボリィとぽかぽかプレゼント』は上映時間が60分程度と子どもに配慮した上映時間になっていて、客層も同様に小さい子どもが多く、騒いだり泣いてしまったりしても「みんな一緒ですから」という空気になっていて安心できる。しかし、幅広い年齢層が観る『クレヨンしんちゃん』シリーズや『ドラえもん』シリーズ、さらにマーベル系の映画となると神経を使わなくてはならない。

 実は作り手側もそれは考えて作っている。例えば『ゴジラ』シリーズもそうだ。

 特に2000年以降のゴジラシリーズは、親子連れで劇場に女の子を一緒に連れていく場合に配慮して『とっとこハム太郎』を同時上映していたり、子どもが飽きないように冒頭からいきなり怪獣のバトルシーンを盛り込むなどの工夫がされている。

 しかし『ゴジラ』シリーズの醍醐味ともいえるのが、政治的駆け引きなどのドラマパートだ。大人は最も楽しめるシーンの1つでもあるのだが、そこで集中力が切れて騒ぎだしてしまう子どもが続出していたのも事実。

 「子どもだから仕方ない」と思う人もいる一方で、子どもが騒いでしまうのも迷惑行為だと感じる人がいるのも、それはそれで事実ではある。

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