アニメ『ONE PIECE』ワノ国編は毎回が神回状態に “ニカ”となったルフィの圧巻バトル
バトルバトルバトル。漫画でもアニメでも『ONE PIECE』の華のひとつが次から次へと現れる強敵たちを相手に、麦わらの一味が繰り広げるバトルアクションだ。放送中のTVアニメ『ONE PIECE(ワンピース)』でも、「ワノ国編」のクライマックスを飾るバトルのまっただ中だが、これが1999年の放送開始以降でも異例の盛り上がりを見せて、毎週の放送へと目を引きつけている。
四皇の一角を占めるカイドウを相手に、麦わらの一味を率いるモンキー・D・ルフィが激しいバトルを続けているTVアニメ『ONE PIECE』。ルフィがこれまでで最強だった「ギア4(フォース)」を上回る「ギア5(フィフス)」という状態に進化した、第1071話「ルフィの最高地点 到達!“ギア5”」では、白い髪をして奔放に動き回ってカイドウを圧倒するバトルを見せた。その変幻自在なアクション描写を観た誰もが、“神回”と呼んで至高のエピソードと讃えた。
そうした評価自体は今も間違ってはいない。ただ、1週間後に放送された第1072話「ふざけた能力!躍動するギア5」に視聴者は、神すら超える究極的なアクションを観て、目玉が飛び出るくらいに仰天した。カートゥーンと呼ばれるアメリカの子供向けアニメのような、ビョーンと目玉が飛び出る描写があったからだけではない。人間業とは思えない描線を持ち、動きを見せるアニメによってルフィの覚醒が描かれていたからだ。
「ギア5」の状態がいったん途切れ、力尽きてしまったように見えたルフィが、「終われねェよな……!!」と言って再び立ち上がった場面。モモの介やお玉、錦えもん、そしてペドロの名を口にしながら体を起こし、髪を白くさせて右腕を地面についたルフィの描線がいつもとは違っていた。きれいに整っておらず揺らぎがある上に、動くとさらに揺らいで肉体に何か新しい生命が宿ったように感じさせた。
地面についた左拳の周囲では小石が舞って、もの凄い力があふれ出しているのではないかと思わせた。その拳を右腕に当てて体を起こしたルフィの表情が、尖った顎をした超イケメンになっていた。その顔で両腕を振り下ろして胸を張るまでの描写から、ルフィの身にとてつもないことが起こったのではないかといった印象が浮かんだ。
これまでとも、この後とも違いが際立ったこのシーンを指して、ネットにはAI(人工知能)が作画したのではないかといった噂も立った。それは、AIのように人間業を超えた作画という意味では当たっているかもしれない。なにしろこのシーンを手掛けアニメーターが、他の誰も真似できない絵を描くことで知られる大平晋也だからだ。
とてつもない人の動きを、とんでもないエフェクトも込みで描き上げて、アニメ作品の中で決定的とも言えるシーンを作り出す。宇田剛之介のアニメ映画『虹色ほたる ~永遠の夏休み~』で、主人公の少年が妹の手を取り参道を駆け上がるシーンや、宮﨑駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』の冒頭で、群衆が火事から逃げ回ったり火事を消そうと走り回ったりするシーンなど、見ればそれと分かる絵と動きを描いて存在感を示した。
『ONE PIECE』がそんな決定打となる仕事を、第1072話「ふざけた能力!躍動するギア5」のそのシーンで起用したのは、長いシリーズを通してここが大きな山場だという判断があったからだろう。原作漫画ではたった数コマで描かれているシーンを引き延ばし、モモの介やペドロの顔も差し込んで、ルフィがいつも誰かのために戦っていることを思い出させた。その上で、力の波動が伝わってくるような作画でルフィを覚醒させて、文字通りにギアが上がったことを印象付けた。