『らんまん』松坂慶子の穏やかな笑み、真っ直ぐな瞳に涙する タキ自身が実感する死期

『らんまん』松坂慶子の穏やかな笑みに涙

「心が震える先に金色の道がある」

 かつて万太郎(神木隆之介)にとっての人生の師匠である蘭光(寺脇康文)は、学び感じることの大切さを説いた。寿恵子(浜辺美波)を連れて、再び佐川に帰ってきた万太郎。『らんまん』(NHK総合)第60話にて、佐川で家族になること、つまりは小学校の先生をしながら植物採集をして佐川で暮らすことを提案する寿恵子に、万太郎の心は揺れていた。

 そんな折に、東京大学から横文字の手紙が届く。波多野(前原滉)、藤丸(前原瑞樹)らの手紙と一緒に同封されていたのは、ロシアのマキシモヴィッチ博士からの手紙。標本の検定の正確さを認め、土佐のfloraをまとめた万太郎を高く評価しているだけでなく、送った標本の中の「マルバマンネングサ」が新種の植物と認められたのだ。ぷにぷにした肉厚な葉を持つ、寿恵子もお気に入りのかわいらしい植物。学名には「セドゥム・マキノイ・マクシム」と、植物の発見者である「槙野万太郎」から「マキノイ」と名付けられた。万太郎と寿恵子、竹雄(志尊淳)は円になって飛び跳ねるほどに大喜び。興奮して声が裏返りながら、徐々に理解が追いついていく絶妙な塩梅の芝居を神木隆之介が見せている。

 一方、タキ(松坂慶子)は死期が近づいているのを実感していた。町医者である鉄寛(綱島郷太郎)に告げたのは、延命の薬の製造。タキは万太郎と寿恵子の子供を抱いてみたいという新たな願いを持ってしまった。同時にその近い未来までも生きられないことをタキ自身が悟っていることを表している。

 新たな欲が生まれることは、人間誰しもにある。しかし、タキは自分の人生を峰屋のために尽くしてきた。それは誰よりも自分に厳しかったタキが、初めて自分の願いを口にした瞬間。諦めと一緒に「ああ……すっきりした」という素直な感情がタキに込み上げる。笑みを浮かべ涙の光るタキに鉄寛は言う。「願いこそが、どんな薬よりも効くことがあります。言うてみてください。東京に戻らんと、そばにおってほしいと」。

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