『らんまん』志尊淳演じる竹雄が大きな岐路に立たされる 自分自身の人生を歩む姿を願って

『らんまん』万太郎を支えてきた竹雄の姿 

 草木の生命力と万太郎(神木隆之介、幼少期は森優理斗、9~12歳は小林優仁)のいきいきとした生き方がお茶の間を明るくする連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)。中でも、万太郎を支える竹雄(志尊淳、幼少期は井上涼太、13~16歳は南出凌嘉)は大きな魅力を放つ存在だ。

 峰屋の当主として生まれた万太郎は、自由奔放でまったく家業をかえりみない。そんな万太郎を導き、支え、そして一人の人間として誰よりも真っ直ぐ受け止めてきたのが竹雄だ。幼いうちに母を亡くし、身体も弱く、なかなか友人もできなかった万太郎。でもその隣には、いつも竹雄がいてくれた。学問所では万太郎の代わりに木刀で殴られたこともあったし、万太郎が独房に入れられた時には一晩中山道を走り続けたこともあった。家業を捨てて東京に出るとなれば、最愛の人である綾(佐久間由衣)を高知に残し同行することを決意。東京編では万太郎と暮らすために西洋料理店でボーイの仕事をするなど、その献身的な姿が視聴者に愛されてきた。

 竹雄の万太郎への想いは、誰よりも深い。特別な絆で“若”と結ばれた竹雄は、時に母が子を想うような表情さえ見せる。東京に出てきたある晩のこと、帰りの遅い万太郎に竹雄は「わし、今からお医者を呼んできちょいて!」とオロオロしていた。だが長屋の人々は、「万太郎は決して身体が弱くない」と語り、竹雄は驚いた表情を見せた。夜明けから採集に行って大学にも通い、夜更けまで草を干して本を読む万太郎は、竹雄が気付かぬうちにもう「病弱で幼い万太郎」ではなくなっていたのだ。竹雄にとって、自分がいないと生きていけないはずの万太郎は、いつのまにか成長していた。やがて印刷所で過酷な仕事に就くことを決めた万太郎に、竹雄は大粒の涙をこぼして反対をする。竹雄は、自分の知っている万太郎と、刻一刻と変わっていく万太郎をすぐには飲み込めないでいるのだ。竹雄を演じる志尊淳は、そんな繊細な感情のゆらぎを一つひとつ丁寧に表現する。我々がここまではっきりと竹雄の心の動きを理解することができるのは、志尊がより深いところまで竹雄の心を捉えているからなのだろう。

 かつては身体が弱く、竹雄しか頼れる人がいなかった万太郎。東京に行く時も、結局は竹雄がいないと暮らしていけないような世間知らずなところがあった。しかし、万太郎は東京で徐々に自立していく。自らの人生を切り拓き、友人を作り、誰かのもとで働くことさえできるようになり、恋もする。そこにいるのは、もう竹雄がいないと生きていけないかつての万太郎ではなかった。

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