松重豊と美味しいご飯をずっと食べ続けたい! 『孤独のグルメ』ファン必見のBOXを解説

『孤独のグルメ』ファン必見のBOXを解説

 3月24日に『孤独のグルメ Season10』Blu-ray&DVDBOXが発売された。昨年放送された、記念すべきシリーズ10作目にして10周年目の最新シリーズに加え、2021年と2022年の大晦日に放送されたスペシャルドラマも収録されている。さらには特典として、Season10メイキングと、「2022大晦日スペシャル」の舞台裏を定点カメラで撮影した「ザ・ドキュメント2022大晦日SP」、「Season1」第1話オーディオコメンタリーも収録。『孤独のグルメ』(テレビ東京)と松重豊と井之頭五郎の魅力がたっぷり詰まった、ファン必見のBOXとなっている。一足先に見せてもらったので、見どころを紹介したい。

 まず、それぞれの回の舞台裏を収録した、Season10のメイキング映像と、大晦日SPの裏側に密着した映像で、“グルメドキュメンタリー”であるところの『孤独のグルメ』の真髄を目の当たりにする。『孤独のグルメ』は常に、松重豊演じる、輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎が、営業先で見つけた食事処にふらりと立ち寄り、自由に食べる至福の時間を堪能し、店を後にするまでを描く。そんな安定した物語の流れに身を委ねてしまうため、本作が「グルメドキュメンタリー」であることをつい忘れがちなのであるが、その「パッと見わからないドキュメンタリー性」は、安定した「いつも変わらない味」の裏の濃厚な隠し味とでもいうべきものである。そして、その「グルメドキュメンタリー」が「グルメドキュメンタリー」たる所以を示したとも言えるメイキング映像は、井之頭五郎を演じる松重豊の素晴らしさを物語るものでもあった。もはや松重豊とは井之頭五郎であり、井之頭五郎とは松重豊なのだと感じさせるほどの一体ぶり。そこには、「演じる」を越えたなにかがあった。

 2022大晦日SPにおける、宅麻伸演じる店主のいる札幌の焼き肉店で、お通しのボタン海老を焼いて食べる場面のテスト撮影の際(実際に口にするのは本番のみであり、テスト撮影の際は仕草のみに留める)、それまで淡々と段取り通りに動いていた松重が、突如海老の殻が刺さったフリをして周囲の皆を笑わせる。何気ない1コマに無声映画の1シーンのような雰囲気が漂う瞬間である。また、近年の新しい試みとして始まった、松重セレクトの「追加メニュー」決めにおいて、スタッフと松重が「あれでもないこれでもない」と試行錯誤するてんやわんやも面白い。

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 さらに、本作は、五郎が黙食する光景に、「心の声」が後から重ねられるという手法をとっているために、実際に松重が食べた時に感じたことを、その場にいる脚本家に伝え、その場で脚本に反映するという作業が頻繁に行われる。追加メニュー決めの際、実際に交わした松重と店主との会話が、すぐさま劇中の五郎と店主のやり取りに反映されたり、松重がその店の漬物の美味しさに感動し、当初の予定になかった漬物を紹介する場面が加わったりと、その場で起きたこと、松重が感じたことが、井之頭五郎の物語に組み込まれていく。

 続いて、「Season1」第1話オーディオコメンタリー。番組終わりの「ふらっとQUSUMI」でお馴染み、原作者で本作の音楽も手掛ける久住昌之と、プロデューサーの吉見健士、脚本の田口佳宏の3人が、シーズン1第1話の各場面を見ながら、当時を振り返る解説付きの第1話なのであるが、「手探り状態」の中で現在の『孤独のグルメ』スタイルの基礎が築かれていった当時の様子を垣間見ることができて、非常に面白い。

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