メイキング映像はまるで青春映画! 『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』は特典も必見

『ベビわる エブリデイ!』は特典映像も必見

 凄腕の殺し屋でありながら、人間関係全般が苦手な深川まひろ(伊澤彩織)。彼女の相棒で、同じく殺しの腕は天下一品、人間関係はそこそこの杉本ちさと(髙石あかり)。そんなふたりのドタバタ&ダラダラな日常と、日本映画屈指のキレキレのアクションが炸裂するのが『ベイビーわるきゅーれ』シリーズ(2021年~)だ。公開されるや口コミで話題となり、2024年には3作目に当たる『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』が公開され、同年にはドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』がテレ東ほかで地上波放送された。

 今回は、ドラマ『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』を語っていきたいが、これがまた期待を裏切らない良シリーズに仕上がっている。ファンのツボを押さえたユーモアとアクションに加え、シリーズの新境地に達しているのだ。その新境地とは、いわば見えざる敵との戦いである。映画版『ベビわる』は、1作目から3作目を通じて殺し屋(ちさと、まひろ)vs殺し屋が肉体を使った対決が物語の骨子だった。しかし、今回のドラマ版で敵となるのは、完成された「社会の構造」である。本作は「殺し屋」という特殊な仕事を題材にしながら、より「お仕事もの」「青春もの」としての『ベビわる』の魅力が強調されている。

 ドラマでは、2人は大規模な暗殺案件「風林火山プロジェクト」に巻き込まれ、さらにジョブローテーションという殺し屋協会のシステムから、ちさとは殺しの依頼をとってくる営業部、まひろはミスをした殺し屋を始末する監査部に回されるのだが……その全てが悲惨な現場であった。過労や重圧で精神が徐々に壊れゆく人間や、強いこだわりを持った大御所との仕事、体育会系パワハラ上司などなど、仕事こそ「殺し屋」というファンタジーだが、妙にリアリティのある現場が頻出。圧倒的に世知辛い現実を突きつけられ、ちさととまひろは、自分たちがそういった構造の社会の中で、生きていくのかを選ぶことになる。ただ心を殺しストレスフルな現場で生きるのか? それとも抗うのか? キレキレのアクションは健在だが、本作は若者たちがモラトリアムの日々に区切りをつけ、社会と戦う大きな一歩を踏み出した描いた青春ドラマとして、大きな感銘を受けた。

 そんな青春ドラマという側面でも本作を楽しむうえで、是非とも観てほしいのが特典のメイキング映像だ。そこには現実のキャストや監督たちが、ドラマの登場人物よろしく、自分たちの人生における新境地へ一歩踏み出す姿が収められている。これがまた一つの青春映画のようなのだ。

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