佐久間宣行が語る、面白さを生む“構造” 『インシデンツ』は「ゲームやアニメを参考に」

佐久間宣行が語る、面白さを生む“構造”

 今やお笑いファンのみならず、エンタメを好きな人なら一度は名前を聞いたことがあるであろうプロデューサーの佐久間宣行が、「DMM TV」で配信されるコント番組『インシデンツ』を制作した。本作は「地上波では流せないコント番組」というコピーのもと、芸人や俳優たちがタブーとされている過激なネタをもとにしたコントに挑む。

 しかし、本作はただのコント番組ではなく“ハードボイルドコントストーリー”として、コントを軸にドラマが展開されていく。そこで思い出すのは、同じく佐久間がプロデュースした『トークサバイバー』(2022年/Netflix)だが、本作はもっと過激に、そしてもっと驚きに満ちた作品になっていた。

 佐久間の代表作には『ゴッドタン』(テレビ東京系)、『あちこちオードリー』(テレビ東京系)などが挙げられ、自身のYouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」でも芸人の強みを活かした独特な企画の動画を配信している。佐久間がプロデュースする企画は、なぜいつも斬新でエッジが効いていて、かつ確実に“面白い”のか。そこで佐久間に『インシデンツ』の制作意図や狙いから、「笑い」に対する考えを聞いた。

『インシデンツ』は「観ること自体が面白くて、カッコいい」

ーー第1話を観て、冒頭から驚かされっぱなしでした。今回、“やってはいけないこと”をテーマにしたコント番組を企画したのはどういった経緯からでしたか?

佐久間宣行(以下、佐久間):DMMさんからオファーを受けたときに「DMMさんでやるんだったら」と、自分が思う企画をエロ系のものから、新しい賞レースみたいなものまで、8つぐらい持っていったんですよ。その中でDMMさんが「地上波では放送できないコント番組『インシデンツ』」と書いておいた企画を選んでくれました。

ーーDMMさんが選ぶ形で決まったんですね。

佐久間:もともとバラエティーで地上波とのコンプラには多少合わないものはYouTubeでやっていました。サブスクだと、Netflixさんで番組を作った後でDMMさんでやることになり、しかもこれからサービスをローンチすると聞いたので、それならある程度“かました”ものがいいだろう、と思ったのがまずあります。あとコントに、いわゆる“地上波では触れられないもの”を組み合わせるのは僕自身がやれていないジャンルだったから、選んでくれたらラッキーだなと思ってました。

ーー結構チャレンジな企画ですよね。

佐久間:チャレンジだと思いますね。第1話を観ていただいたら終わり方に驚いたと思うんですけど、第2話と第3話はね、マジで「は?」ってなるようなものです(笑)。ネタバレになるので詳細は伏せますが、全話を通して構成を組み立てるのは結構大変でした。

佐久間宣行

ーーそもそも、どうして“地上波で放送ができない”ような企画をやりたいと考えたのですか?

佐久間:まず、別に地上波でもコンプラに引っかかっているつもりはないんですよね。『ゴッドタン』では普通の局だったら怒られることをやってますし、「これどうやって放送しようかな」と思うようなことがいつも目の前で起きてるので。ただ、ストーリーがあるものではやってなかったということですね。ストーリーがあるものだと何で難しいかというと、バラエティの場合は現場で起きたことだからしょうがないだろう、で押し通せるのですが、ストーリーがあるものの場合、完全にこっちが意図してるというのもあって(笑)。あとは単純に“面白さ”の部分。テレビの中では「くだらないけど、ちょっと過激な面白さ」を作ってほしいと発注が来たことはなかったので、自分で組み立ててやりたいなと思いました。

ーー実際に拝見して、制作側の熱量を感じる作りになっていると感じました。制作時はどのような思いだったのでしょうか?

佐久間:今回はローンチタイトルの一つなのもあり、せっかく任せていただいたんだったら、ちゃんとクオリティの高いもので、かつ好きなことをやって、悪ふざけして、そしてちゃんとカッコいい作品を作りたいなと思いました。なんというか、「観てくださいよ〜」みたいな感じの作品ではないです。これを観ること自体が面白くて、カッコいいなと思えるようなものを作りたいと思ってました。

ーーキャスティングはどのように進められたのですか?

佐久間:まず最初に、さらば青春の光(以下、さらば)とやりたいなと思いました。彼らのコントが好きなので単独ライブは全部行ってるんですが、彼らのコントは、僕が『インシデンツ』でやりたいものにちょっと近いと思ったんです。なので、さらばの森田と(東)ブクロだったら無理なくいけるなと感じました。あとヒコロヒーとみなみかわは、『M-1グランプリ』に出たときのユニットネタが好きで、コントが上手いのを知ってたので。ヒコロヒーとブクロの相性もすごく良いですよ。そうしてコアの部分を作った上で、コント集団の中にいながら、バイプレイヤーであり、キャラが被らないのは誰だろうなと思ったときに、ザ・マミィを思いつきました。

ーーさらばさんが軸だったんですね。

佐久間:ただ、それでストーリーを作っていくと、さらばやヒコロヒーとかが全く出ない回があるんです。それならもう好きな奴で作ろうと思って、アルコ&ピースやラランド、春日、かがや、ゾフィー、峯岸みなみと野呂佳代と……みたいな、もう本当に上手い人だけを呼んで作った感じですね(笑)。

佐久間宣行

ーーあと、伊藤健太郎さんのキャスティングは驚きでした。

佐久間:伊藤さんは、ドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)を観たときにも(演技が)上手いなと思っていたんですけど、あれは少し過剰なコント芝居じゃないですか。その上で舞台を観たときに、改めてめちゃくちゃ上手いなと思ったんです。ナチュラルなお笑いセンスがすごいあるなと。それでお声かけしました。

ーー脚本担当の方々はどうですか?

佐久間:まず、オークラさんにベースのシリーズ構成と僕がやりたいことを伝えました。今回の世界観のアイデア自体はオークラさんなんです。となると、コントはオークラさんも書けるから、コントを書いてもらう人はあと2人ぐらいでいいなと思ったときに、さらばのラディカルさを出すために、さらばのコントを作ってる渡辺(佑欣)さんに入ってもらいました。そうしたら、渡辺さんが本当に素晴らしくて。なので、渡辺さんのコントをどんどん増やしました(笑)。もう1人は、かもめんたるのコントが大好きなので、絶対に(岩崎)う大くんに書いてほしいとお願いしました。

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