『舞いあがれ!』浅田芭路に感じる無限の可能性 雄大な青空とばらもん凧も物語の主役に

『舞いあがれ!』浅田芭路の演技に驚くばかり

 『舞いあがれ!』(NHK総合)ヒロイン・舞(浅田芭路)の五島での生活が第2週「ばらもん凧(だこ)、あがれ!」第10話にて幕を閉じた。つまりそれは東大阪から五島へと移住した本来の目的である、舞が元気になったということを示してもいる。

 母・めぐみ(永作博美)が「元気になるから」と言い聞かせたこの“元気”が指すのは、舞の心の病気。心の持ち方といった方がいいのかもしれない。人の気持ちを察するがあまりに自分の意見や思いを口に出すことができなかった舞は、祖母・祥子(高畑淳子)との暮らしの中で一歩ずつ成長してきた。「自分のことは自分でやる」「失敗は悪いことではない。出来ないことは次にできるように。できないなら、できることを探す」。祖母の教えを理解し人の失敗を励ますことができるようになった舞だったが、一太(野原壱太)のばらもん凧を壊してしまったことをずっと気に病んでいた。弟の慶太のために巨大なばらもん凧を飛ばすという一太の誘いを断ってしまう舞。そこには失敗を恐れる、自分に自信のない舞の心情があった。

 祥子の「自分の気持ちも大事にせんば」、電話越しのめぐみの「舞の願いが届くように一生懸命やったらええの」という言葉に背中を押され、舞は一太に「私も、ばらもん凧あげたか!」と告げる。五島の青い空に高く上がっていく、ばらもん凧。糸の先頭を持つのは一太から思いを託された舞だ。そこには一太なりの、舞の気持ちの変化を察しての行動もあったのだろう。満面の笑みを浮かべて「ばんばっ! 凧、私が揚げた!」と叫ぶ舞に、祥子も笑顔で返す。それは失敗を恐れずに勇気を出して、自分を乗り越えることができたということだ。

 大阪に帰らすことを決めた舞に、祥子はばらもん凧に例えて「向かい風にも負けんと、たくましく生きるとぞ」と言葉をかける。それに「ばんば。今までありがとう」と返す舞。涙しそうになるのを必死に堪えて笑顔で応える祥子。そこで引き止めてはいけない。愛する孫を信じて、もう大丈夫とめぐみの元に送り出すのだ。

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