『舞いあがれ!』なぜシンボル/語りが“ばらもん凧”に? 制作統括にその意図を聞く

『舞いあがれ!』語り、なぜ“ばらもん凧”?

 10月3日よりスタートしたNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』。第1週、第2週と主人公・舞(福原遥/浅田芭路)の幼少期が展開されており、彼女がいかにして“空”に興味を持っていくのかが丁寧に描かれている。

 ここまでの物語を牽引しているのが、幼少期の舞を演じる浅田芭路。制作統括の熊野律時が取材会で「チャーミングな笑顔と同時に自分のことが言い出せない、ある種の影の部分の両方ができる方」とその魅力を語っていたが、その言葉通り、ザ・朝ドラヒロインの天真爛漫さとは異なる、うちに秘めた思いを見事に表現している。そんな彼女の変化していく心模様を映すかのように物語に彩りを与えているのが、五島の美しい風景だ。第6話で舞がばらもん凧を揚げる風景に(一瞬揚げることに成功するもこのときはすぐに降下)心を奪われた視聴者も多いことだろう。

 ばらもん凧は本作においても重要なキーアイテム。「語り」を務めるさだまさしが「ばらもん凧」であったことからもそれは明白だ。制作統括の熊野はその意図について次のように語る。

「ばらもん凧は引っ込み思案の舞が変わっていくきっかけの象徴的なアイテムです。成長した後も、ばらもん凧はずっと彼女の部屋にも飾られて、この作品のシンボルとしてずっとつながっていきます。さださんは長崎出身で、五島の歌も作っている。さださん自身もばらもん凧を昔から知っているということで、少し不思議な形ではあるのですが、『ばらもん凧/語り』であり、舞を見守る存在として、さださん以上に適任の方はいないなと。さださんも完成した映像を観ながら、『“ばらもん凧”として、舞ちゃんの成長を楽しみながらナレーションを入れています』と語ってくれました」

 近年の朝ドラの“語り”は、亡き父や祖母だったり(『なつぞら』『半分、青い。』)、舞台進行の黒子だったり(『おちょやん』)、最終週に登場する人物だったり(『カムカムエヴリバディ』)、さまざまな仕掛けが施されてきた。すでに正体が“ばらもん凧”として明かされてしまっただけに、さだの“役者”としての登場は難しいかもしれないが、最終回に向けて、意外なサプライズが起きることも期待したい。

 第2週の最後には、2メートルにも及ぶ巨大ばらもん凧を揚げるシーンが用意されている。巨大ばらもん凧をあげるには風速5メートル以上が必要なようだが、中断を繰り返しながらも最後の最後で奇跡の“神風”が吹いたようだ。

 なにかと世知辛いことが続く世の中でも、朝に勇気や希望を与えてくれるのが朝ドラの魅力。空へと舞い上がっていくばらもん凧は必見の映像になりそうだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00~8:15、(再放送)12:45~13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30~7:45、(再放送)土曜9:45〜11:00
※土曜は1週間を振り返り
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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