『舞いあがれ!』は優しさで視聴者を包む朝ドラに 高畑淳子演じる祥子の“肯定力”の美しさ

『舞いあがれ』祥子の美しい肯定力

 「できない」が、少しずつ「できる」になる。連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)第7話では、舞(浅田芭路)が祖母・祥子(高畑淳子)に見守られて成長する過程が描かれた。

 これまで、母・めぐみ(永作博美)が体調を心配しすぎていた部分もあって、挑戦すること、そして失敗することへの不安を募らせてきた舞。自分は何をやってもうまくいかないし、周りにどんくさいと言われて笑われてしまう。大阪での暮らしによって自己肯定感さえ低くなってしまった舞と、彼女の「できない」を代わりにやってしまう母と少し距離を取らせ、自分で自分のことをやるように教える祥子。舞に自分の仕事の手伝いをさせることで、彼女の自信を高めようとしていた。

 “自分の意志で” 祥子の手伝いをすると言った舞。熱が下がっていますように、という彼女の願いは叶い、しっかり自分でセットした目覚ましい時計の力を借りて、朝早くに目を覚ました。畑に向かうと、ビワの収穫をすることに。ハシゴを登り、優しくもぎって取ることを教わる。まずは、一つ。ちゃんともぎ取れたら、それをまず誉める祥子。そしてカゴいっぱいにビワを入れていく。手元のビワが取り切れたから、次は少し手が届かない場所まで挑戦する舞。ここが、すでに彼女が自分の「できる」のその先へと向かう向上心を高めている描写となっている。しかし、足を滑らしてカゴを落とし、中身をぶちまけてしまった。

「落ちたら拾えばよか。手が届くところだけでよかよ」

 すかさず失敗したことを考えすぎないよう、フォローする祥子の言葉が優しい。このメッセージはのちに2人がジャムを瓶詰めするシーンでも反復されている。おばあちゃんのように最初からうまく瓶の中に入れられず、こぼす舞。慌ててすぐに謝るが、祥子は「よかよか、もう一回やってみるね」と、おおらかな様子で怒らずにもう一度舞に挑戦させる。次にやるとうまくできて、舞が嬉しそうに笑い、それを祥子が嬉しそうに笑った。

 小さなことから成功体験を積み上げさせる祥子の肯定力に、そして少しでも自分のやったことに自信を持ち始めることができた舞の成長によって、わたしたちの朝の心が温まる。『舞いあがれ!』は、第2週にしてキリスト教や教会に触れる点も含め、地域や人物の描写の丁寧さ、小道具の細かさがとても良く、何よりそういった優しさで視聴者を包んでくれるような朝ドラ作品になりそうだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる