『ちむどんどん』視聴者が見守ってきたヒロインの成長を総括 暢子の料理人人生の道のり
にんじんしりしりー、ニガナの白和え、パパイアンブシー……テーブルに所狭しと並んだ沖縄料理は、暢子(黒島結菜)の幼少期の比嘉家の食卓を思い出させた。試食していた沖縄出身者・智(前田公輝)や歌子(上白石萌歌)の反応もよく、シェフの二ツ橋(髙嶋政伸)や「アッラ・フォンターナ」の常連・田良島(山中崇)の評価も良好だ。『ちむどんどん』(NHK総合)では、暢子がお店で出す料理の見直しをしていたが、ついに手応えを感じ始めている。
開店当初は顔なじみが押しかけて大盛況だった暢子の沖縄料理店「ちむどんどん」は次第に客足が遠のいていた。店を経営するという視点から見れば、客が来ないということは何か失敗をしているということだろう。暢子は今回の失敗の原因を「東京の人の好みに合わせることばかり考えすぎて、沖縄料理の元々の魅力を忘れていたこと」と分析。母・優子(仲間由紀恵)と姉・良子(川口春奈)が持ってきてくれた「うまんちゅ給食」をヒントにまた一歩成長した。
いつでも勢いよく我が道を進む暢子は、その勢いと気持ちが前のめりすぎてよく失敗してしまう。「アッラ・フォンターナ」の料理人としての仕事に慣れ始めた頃、オーナーの房子(原田美枝子)に屋台のおでん屋の立て直しを命じられた時は、“自分らしいおでん”を目指してイタリア風おでんを提供した。物珍しさに最初こそ屋台は繁盛するものの、次第に立て直しが成功したとは言えない状況に陥ってしまう。二ツ橋が怪我をしたため、「アッラ・フォンターナ」のシェフ代行に任命された時の暢子は、“みんなのリーダーであること”を大事にし、男性ばかりの職場でうまく立ち回ろうと強気に出すぎてしまった。その結果、矢作(井之脇海)たち男性スタッフとの溝がどんどん深くなり、厨房がうまく機能しなくなってしまった。暢子のやる気と意気込みはなぜかいつも空回りし、失敗を引き寄せてしまうのだ。その様子にこちらはやきもきさせられる。
だが、暢子のすごいところは、失敗のたびに原因を考え抜き、学んで、必ず改善することだ。そのためには進んできた道を一旦、戻るようなことも嫌がらない。おでん屋の立て直しの時は、戦後間もない頃、房子がおでん屋の店主・ヨシ(大島蓉子)におでんを差し出したエピソードから基本を重視することを学ぶ。シェフ代行をうまく務められなかった時は、二ツ橋からのアドバイスを受け、リーダーっぽさを目指して、振る舞うのではなく、ありのままの自分を出すことの大切さを学んだ。そうして状況が改善し、暢子は仕事をやり遂げ、人として成長したのだ。
今回は、「足元の泉」を見ていなかったことに気がつけたのが大きな学びだろう。おでん屋で料理の基本を大事にすることを学んだ暢子だったが、今回は、沖縄で育ってきた自分、つまりはそのルーツを大事にするということを大事にすることに気がついた。暢子が”料理人になる”という決意を持って沖縄から出てきて、ずいぶん時間が経った。いろいろなことがあったが、ついに、「アッラ・フォンターナ」の料理人ではなく、本当の意味で、暢子にしかなれない“料理人になる”準備ができたのかもしれない。暢子の夢はきっとここから実現していく。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK