朝ドラ“相手役”知らない方が面白い? 『ちむどんどん』など恋の行方を追うカラクリ

朝ドラ“相手役”知らない方が面白い?

 神木隆之介が主演を務める2023年度前期のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『らんまん』の妻役として、浜辺美波が発表されたことで、期待がさらに高まっている。思えば、2020年度前期放送の『エール』も、窪田正孝の相手役が最初から二階堂ふみと発表されていたが、近年の作品では現在放送中の『ちむどんどん』をはじめ、前作の『カムカムエヴリバディ』や『おかえりモネ』『なつぞら』『半分、青い。』など、“相手役”が発表されない作品のほうが割合として断然多い。

 その大きな違いは、実在したモデルもしくはヒントとなった元ネタがある作品と、オリジナル作品という部分にあるが、それだけで断ずることができない面白さがある。また、相手役が発表されている場合にも、されていない場合にも、どちらにも利点はある。

 発表されていないことの最大のメリットは、視聴者がヒロインの恋の行方をドキドキしながら見守れることだろう。

 3代にわたってドキドキさせてくれるという高難度な盛り上げ方を見せてくれたのは、『カムカムエヴリバディ』だ。初代ヒロイン・安子(上白石萌音)が初恋相手・稔(松村北斗)と互いの家の事情により別れを決意し、稔の下宿先に会いに行ったものの、何も語らず、汽車で一人涙するところに別れたはずの稔が現れ、「なんで泣いてるん?」と声をかけたシーンは、朝ドラ史上屈指のときめきシーンになっている。その後も二人の間には障害があったが、安子に思いを寄せる幼馴染で、稔の弟・勇(村上虹郎)と安子の父(甲本雅裕)、稔の父(段田安則)の計らいが後押しする形で、一緒になれた二人。しかし、戦争が全てを奪ってしまう。

 一方、2代目ヒロイン・るい(深津絵里)の場合、最初に好意を抱いたクリーニング屋の客(風間俊介)が、るいの額の傷を見たことで腰が引け、あっという間に退場。予想通り相手役に見えていた「謎の男」錠一郎(オダギリジョー)と距離が徐々に縮まり、結ばれるが、そこに至る道のりは非常に険しいものだった。

 さらに3代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)の場合、相手役だと思った五十嵐(本郷奏多)と会うたびにケンカ→交際という王道展開に至ったにもかかわらず、破局。再会し、結婚を決意……したものの、その相手はひなたではなかったという盛大なズッコケぶりを見せてくれた。しかし、だからこそ最終的に生涯独身に見えたひなたが初恋相手と仕事を通じて再会する。何があるか最終回の最後までわからないドキドキをくれた作品だった。

 また、相手が最後までわからないという意味では、『半分、青い。』のパターンは異色だった。同じ病院で同じ日に生まれ、胎児同士からつながりがあったヒロイン・鈴愛(永野芽郁)と律(佐藤健)。まさに運命の出会いだった二人は、それぞれ別の相手と付き合い、結婚し、別れ、散々遠回りした挙句、「発明」を通してパートナーとなり、結婚を予感させるかたちで幕を閉じる。

 一方、『なつぞら』の場合は、ヒロイン・なつ(広瀬すず)にヒントとなった人物がいたが、あくまでヒントで、オリジナルの物語であったこと、「イケメン朝ドラ」と言われるほどにイケメン俳優勢ぞろいだったことから、相手役がなかなか見えなかった。

 そんな中、クラスで悪口を言われていたなつをかばい、なつが絵を描くきっかけを作った幼なじみの天陽(吉沢亮)の人気が序盤を引っ張っていた。しかし、あっけなく別の女性と結婚。しかも、天陽のモチーフになった人物(神田日勝)が32歳で早世したことがネットなどで周知となるにつれ、天陽との別れを惜しむ声が視聴者の間で盛り上がっていく。

 一方、なつの相手役となった坂場一久(中川大志)は、出演が発表された時点で相手役候補と見られていたが、頭脳明晰で不器用で理屈っぽい変人キャラとして登場。コミュニケーションの不得手さも手伝い、時間をかけてじっくり距離が縮まり、じわじわと人間らしさを見せ、それが徐々に愛らしさに変わり、やがては子煩悩の良き父になるという素敵な変化・進化を見せてくれた。

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