『映画 オッドタクシー』とVTuberに共通点も? ビジュアルが同一性を担保しない世界

『オッドタクシー』とVTuberの共通点

 リアルサウンド映画部のオリジナルPodcast番組『シーンの今がわかる!アニメ定点観測』が配信中だ。映画ライターの杉本穂高と批評家・跡見学園女子大学文学部准教授の渡邉大輔が対談しながら、話題のアニメ作品を解説していく。

 第2回で取り上げた作品は『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』。ディズニー映画『ズートピア』との比較を通し、本作が描く人間と動物の関係性について掘り下げた。今回はその対談の模様の一部を書き起こし。続きはPodcastで楽しんでほしい。(編集部)

※以下、『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』に関するネタバレあり

可愛い絵柄でダークな物語を描く

杉本穂高(以下、杉本):今日は4月1日に公開された『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』についてお話したいと思います。この映画は、去年テレビで放送されたアニメの劇場版で、主人公の中年タクシードライバー・小戸川が癖のある様々な客と会話をしつつ、女子高生の失踪事件に巻き込まれていくという作品です。登場人物の見た目はかわいい動物ですが、中身は迷惑系YouTuberやゲーム課金の沼にハマった人、ヤクザ、アイドルオタクなど、かなりディープでダークなキャラクターであるというギャップがあります。本作品は、まず“擬人化動物アニメ”であるという部分が、これまでの現代日本のアニメとは一風違った立ち位置にいると言えますね。

渡邉大輔(以下、渡邉):この作品を観て思いつくのは、海外アニメだと『ズートピア』、近年の日本アニメだと『BEASTARS ビースターズ』です。『ズートピア』は、肉食動物や草食動物など色々な特性を備えた動物たちが多様に共生する社会を描くことで、現代のポリコレ化した公共的な社会の陰影をあぶり出しました。一方『オッドタクシー』の動物化された世界は、実は客観的に動物が共生している世界というより、本来は人間である主人公が主観的に見た世界という設定ですよね。ただ、主人公が非常に個人的な内面の世界を見ていて、だからこそ特異な属性やアイデンティティを持った人たちが多様に共生する社会が現代社会なんだ、という表裏一体な世界が描かれています。『BEASTARS』も擬人化された動物が描かれていますが、そういう部分は近年の他の作品と比較しても共通性が見られると思います。

杉本:現代社会を鋭く描写した作品であるというのは、非常に多くの人が言っていますね。逆に『ズートピア』と重ならない部分はどこだと思いますか?

渡邉:『ズートピア』は色々な陰謀が渦巻く物語を描きながらも、ディズニーらしく親子で観られるよう脱色してありますが、この作品はダークな部分をしっかり描いていますよね。可愛い絵柄でダークな物語を描くというのは、『魔法少女まどか☆マギカ』などを思い出します。

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