『ちむどんどん』歌が重要な役割を果たす? 『エール』に共通する個性的な音楽教師の存在

『ちむどんどん』歌が重要な役割を果たす?

 NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』第15話(4月29日放送)で、上白石萌歌が名曲「翼をください」を独唱するシーンが話題となった。

〈悲しみのない 自由な空へ 翼はためかせ 行きたい〉

 同曲は沖縄返還の1年前、1971年にフォークグループ「赤い鳥」がリリースした『竹田の子守唄』のB面に収録されたもの。その後、音楽の教科書に採用されて以来、合唱曲として歌い継がれてきた。

 上白石萌歌演じるヒロインの妹・歌子は幼い頃から歌をこよなく愛するが、シャイで内気な性格から人前で思い切り歌うことができない。そんな彼女が誰もいない音楽室に響かせた歌声は切なくも、歌詞も相まって、今後日陰から日の当たる場所へと進んでゆく歌子の未来を思わせた。

 近年の朝ドラでは、今回のようにキャスト陣が作中で披露する、物語との親和性が高い歌が度々反響を呼んでいる。最も近いところで言えば、前作『カムカムエヴリバディ』で上白石萌音、深津絵里、世良公則らが歌ったルイ・アームストロングの「On The Sunny Side Of The Street(以下、サニーサイド)」。ジャズのスタンダードナンバーとなっている同曲は、100年の“ファミリーストーリー”を描く上でテーマソングとも言える重要な役割を果たした。

 第二次世界大戦後、進駐軍クラブで世良が歌ったサニーサイド。幼い娘の子守唄として歌った上白石萌音のサニーサイドや、失恋した娘を優しく包み込んだ深津のサニーサイドにも、同じ祈りが込められていた。それは次の時代を生きる者たちに、戦争、その他の理不尽な出来事に自由を奪われることなく、「日向の道(Sunny Side Of The Street)を歩いてほしい」という祈りだ。朝ドラ初となる三世代のヒロインが初めて揃った名シーンでも深津が歌ったサニーサイドは、視聴者の心に深く刻まれたであろう。

『おかえりモネ』浅野忠信の「かもめはかもめ」に涙 及川親子が新たな一歩を踏み出す

ようやく心を割り、本音を話し合う決意をした新次(浅野忠信)と亮(永瀬廉)。『おかえりモネ』(NHK総合)第113話は、呪縛から解…

 その前の朝ドラ『おかえりモネ』では、浅野忠信が歌唱した「かもめはかもめ」が話題に。同作で浅野が演じた新次は、東日本大震災で妻が行方不明になってから酒に溺れる元漁師。その妻が生前、愛していた曲が1978年に研ナオコのシングルとしてリリースされた「かもめはかもめ」だった。

 中島みゆきが作詞・作曲を担当した同曲は、失恋ソングであると同時に、〈あきらめました あなたのことは〉や〈かもめはかもめ ひとりで空をゆくのがお似合い〉というフレーズからもわかるように愛別離苦からの“立ち直り”を描いた一曲でもある。当初はそんな立ち直りを拒んでいた新次が、物語終盤、自分自身の背中を押すように、同曲を歌いながら妻の死亡届に判を押す回は浅野の名演とともに朝ドラ史上に残る名シーンとなった。

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