『おかえりモネ』浅野忠信の「かもめはかもめ」に涙 及川親子が新たな一歩を踏み出す
ようやく心を割り、本音を話し合う決意をした新次(浅野忠信)と亮(永瀬廉)。『おかえりモネ』(NHK総合)第113話は、呪縛から解き放たれる2人の姿を通して、痛みを抱えたまま前に進む生き方を提示した。
ぎこちなく並んで座る新次と亮を、永浦家の人々は息を潜めて見守る。最初に沈黙を破ったのは亮だ。亮は知り合いから譲り受ける船に「一緒に乗ってくれないか」と持ちかけるが、新次は乗らない選択を取る。
亮にとって、新次が再び船に乗ることはあの日から止まった時間を動かすことであり、新しい船の前で親子3人並んで写真を撮った時に感じた幸せをもう一度手に入れることでもあった。けれど、彼が思い浮かべる未来に美波(坂井真紀)はもういない。
「俺はな、元に戻ることだけがいいことだとは思えねぇんだよ。(中略)だってよ、どんなに思っても、どんなに力尽くしても、元に戻らねえものがあんだよ」
それでも新次には船に乗ってほしいと請い願う亮は“息子”の顔をしていた。そんな亮に新次は“一人前の大人”として向き合う。漁師をやっていた頃の新次にとって、美波は目指すべき港だった。海が穏やかな日も、大荒れの日も、そこには「おかえり」と笑顔で待つ美波の姿があった。「どうしたってそれが叶わねえんなら、俺が海で生きんのはあの日で終わりにしたい」。
亮の乗った船が海に取り残されたあの夜に、元には戻らないこと、そしてどこかでその事実を受け止めている自分に気づいた新次。かつての彼なら立ち直りかけた自分を責め、またお酒を呑んでしまっていたかもしれない。
依存症の治療において「回復」という言葉がある。これは依存症になる前の状態に戻ることではなく、さまざまな助けを借りながら「新しい生き方を手にすること」を意味する言葉だ。いちご農家での手伝いを始め、新しいやりがいを見つけた新次はようやく周りを見渡せるようになり、自分と同じように“元に戻ること”にとらわれた亮がいることに気づいた。だからこそ、今度は自分が「俺は船には乗らねえ」と表明することで、亮の呪縛を解こうとしたのだろう。