『ちむどんどん』歌が重要な役割を果たす? 『エール』に共通する個性的な音楽教師の存在

『ちむどんどん』歌が重要な役割を果たす?

 さらに一つの作品の中で、登場人物の歌唱シーンが何度も注目を集めたのは、2020年前期放送の『エール』。作曲家・古関裕而をモデルに、音楽が果たす役割を描いた同作にはたくさんの歌手やミュージカル俳優が出演し、彼らの圧巻な歌声を堪能することができた。戦争の焼け野原に響いた薬師丸ひろ子の賛美歌「うるわしの白百合」、甲子園のマウンドで山崎育三郎が歌い上げた「栄光は君に輝く」など、記憶に残る歌唱シーンを挙げれば枚挙にいとまがない。

 そんな歌のプロに負けじと伸びやかな歌声を披露したのが、ヒロイン・音を演じた二階堂ふみだ。元々オペラ歌手を目指していた音は子育てがひと段落した後に再び夢を追いかけるも、自分の実力の限界を感じて出演が決まっていた舞台を降板。その後、クリスマスに開催された慈善音楽会で、窪田正孝演じる主人公で夫・裕一作曲の「蒼き空へ」を歌った。

〈さあ羽ばたけ 途切れたあの夢の続きへと〉

 劇中オリジナルソングである同曲は、大舞台でなくとも音が夢を叶える場所はあることを教えてくれる。そして音は小さなステージで、ただ歌うことが大好きだった幼き日のように心からの喜びを歌で表現するのだった。

 さて年端もいかない子どもの頃に父親を亡くし、またその父の影響で音楽に興味を持った点など、音と『ちむどんどん』の歌子は共通項が多い。さらに、彼女たちに影響を与える音楽教師もまた強烈なキャラクター性を持っている点で似ている。

『エール』“ミュージックティチャー”古川雄大 演劇界のプリンスから独特な曲者キャラへ

「だから先生はやめてぇええっ!」  NHKの朝ドラ『エール』4週目に登場し、初回1分弱の出演時間で鮮烈な印象を残した御手洗清太…

 音の歌を指導した古川雄大演じる声楽講師の御手洗はトランスジェンダーであることを理由に教師から虐待を受けた過去から、“先生”と呼ばれることを嫌い、音に“ミュージックティーチャー”と呼ばせていた。しかし、何度も音が呼び間違えるたびに訂正するため、しまいには「ミュージックティ……」でバッサリとカットされる演出が恒例に。“ミュージックティ”との愛称で親しまれるようになった。

 今回の朝ドラでも、片桐はいり演じる音楽教師の下地が、その歌の才能に一目置いている歌子を追い回すシーンがお馴染みとなってきている。「モアパッション! モアエモーション!」「歌は喉で歌うものではなく、心で歌うもの!」と歌はなんたるかを説きながら、歌子を追い回すシーンのインパクトたるや……。しかし、誰よりも音楽を愛し、真正面から生徒にぶつかっていく下地は自信のない歌子を変えうる存在だ。『ちむどんどん』第5週では、ついに歌子は下地の前で歌を披露する。少しずつ自分の殻を破っていく彼女の歌声がどう変化していくのか、楽しみに見守りたい。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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