『カムカム』の“希望”であり続けた川栄李奈 “続けられた”ことがひなたにもたらした自信

『カムカム』の“希望”であり続けた川栄李奈

 最終回当日を迎えた『カムカムエヴリバディ』(NHK総合、以後『カムカム』)。3世代に渡るヒロインの物語が紡がれた本作、先代の2人に比べて3人目のヒロイン ・ひなた(川栄李奈)は異色だ。

 初代ヒロイン・安子(上白石萌音)と二代目ヒロイン・るい(深津絵里)は家族関係に大きな喪失感、わだかまりを抱えていたが、そんなものと一切無縁なのがひなただ。

 るいが実家のある岡山を離れ大阪の竹村クリーニング店に住み込みで働くようになった際に、竹村夫妻の何気ない掛け合いを見て思わず涙ぐむシーンがあった。変に気を使われることもなく、なんだか申し訳なさそうに腫れ物に触るようにされることもない。ただただそこにいる一員であることを“当たり前”にごくごく自然のこととして受け入れ迎え入れてもらえる、そんな心から安心できる空間に、物心ついて以来彼女が初めて触れた瞬間だったのかもしれない。

 家族の温もりに飢えていたるいと錠一郎(オダギリジョー)が手探りで一生懸命築いた大月家の食卓には、竹村夫妻の面影が確かに宿っていた。そんな一家団欒の場で、錠一郎と一緒に時代劇を欠かさず見ながら育ったひなたにはそりゃあ一切の陰りも迷いもない。

「自分は一人ぼっちになってしまうかも」
「もしかすると邪魔な存在なのかもしれない……」

 るいや錠一郎が幼少期に駆られたことがあるに違いない不安から最も遠いところにいるのがひなたであり、彼女の健やかな成長は両親の祈りによって常に守られてきた。思いっきり泣いたり笑ったり時には憎まれ口を叩いたり、投げ出してみたり、甘えたり、頼ったりできるのは信頼できる大人が常に側にいたからこそだろう。そんな“子どもらしさ”のあるひなたを川栄李奈ははつらつに好演してきた。

 人生のどん底にいたるいと錠一郎の元に彼らが生き直すきっかけとして送り込まれたかのような“希望の塊”ひなたは、真っ直ぐで他人の裏を読むことを知らないが、それは彼女にはストレートに思ったことをそのまま表現することを許される環境があり、裏など読む必要のない人間関係を何の疑いもなく享受できていた証でもあるだろう。そんなひなたの“ギフト”を川栄の打てば響くお芝居が見事に彩る。そしてまたある意味、少し重くも感じられかねない背景を一方的に背負わされたひなただが、そんなことを全く感じさせない軽やかさを川栄演じるひなたはずっと損なわないでいてくれた。ずっとずっと“希望”であり続けてくれた。

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