『カムカム』の“希望”であり続けた川栄李奈 “続けられた”ことがひなたにもたらした自信
そんな彼女はまた“普通”や“当たり前”に縋ったり縛られることもない。幼少期から他の家庭と違い、一家の大黒柱は母親のるいで、働かない父親のことを周囲からからかわれることもあった。きっとるいからは実家について深く聞いてはいけないような空気もどこか出ていただろう中、ひなたにはなんだか歪な形をそのまま愛し、大切にできる強さ、“うちはうち”を貫けるタフさと底抜けの明るさが備わっていた。
曲がったことが嫌いで、こうと決めたことをやり遂げようとする侍のような生き方に憧れるも、何をやっても続かず三日坊主だったひなたが、大好きな時代劇のため、またるいや安子、稔(松村北斗)からのバトンを受け継ぐために再び英語に出会い直し、地道にコツコツ鍛錬を重ねる過程の中で大きく成長する姿も見応えがあった。
“続けられた”ことがひなたにもたらした自信は大きく、次々に新たなチャレンジの扉が開き始める。いつしかひなたが家族から“守ってもらう”側で“送り出してもらう”側から、両親を“送り出し”“守り労わる”側にスライドしていく姿を川栄は自然に、そして頼もしく見せてくれ、それこそ三世代に渡るバトンタッチを感じさせてくれた。安子のことになると弱腰になるるいを励まし、見守り支えるひなただが、この時だけはひなたの方がどこか母親のようで、巡り巡る時間や順番に想いを馳せさせる。
アニー(森山良子)の前ですぐには素直になれないかもしれないるいの気持ちをきっと今のひなたならば、齟齬なくそっくりそのまま届けられるに違いない。アニーとるいの真ん中で手を取り合うひなたの姿が目に浮かぶ。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK