『ガンパウダー・ミルクシェイク』監督が受けた日本カルチャーの影響 「黒澤明は“神”」

『ガンパウダー』監督が語る日本文化の影響

 ネオンカラーのポスタービジュアルが印象的な映画『ガンパウダー・ミルクシェイク』が3月18日から公開された。本作は、そのビジュアルのイメージそのままに、摩訶不思議な世界の中で女性たちが奮闘するアクション映画。が、ジャンルで言えば間違いなく「アクション」ではあるのだが、コメディでもあり、ヒューマンドラマでもあり、シスターフッド映画でもあり、そのタイトルのとおり、あらゆるジャンル、設定、時代が“シェイク”された一作でもある。

 脚本・監督を務めたイスラエル出身のナヴォット・パプシャドは、“シェイク”された本作の狙いについて次のように語る。

「時代や、場所を特定する作品にはしたくなかったんです。本作は私が影響を受けてきたあるゆる作品の記憶が刻まれていることもあり、どこか荒唐無稽な世界観になっています。何でも起きる世界であり、非常にクレージーな場所です。なので、少しでも現実の世界と地続きな設定にしてしまうと、観る方によっては別の情報が入ってきて、物語の中に入り込めないのではないかと。その分、キャラクターたちの造形、感情の変化は地に足のついたリアルな描写にしています。それによって、観客の皆さんも物語と登場人物たちに集中してもらえるからです。このコントラストは私が映画を作る上で意識しているところですね」

 カレン・ギランが演じる主人公・サムが「マシュマロ」と日本語で書かれたポップなTシャツを着ているのが象徴的なように、本作には至るところに日本のカルチャーが散りばめられている。パプシャド監督は、日本のカルチャーから計り知れない影響を受けたことを明かす。

「登場人物たちが日本語が書かれたTシャツを来ているのは、僕が日本のアニメが大好きな影響です(笑)。日本の作品の影響を受けていることを僕はとても誇らしくて思っているので、そのことを観客の皆さんにも理解していただく思いも込めて、Tシャツを登場させました。日本のカルチャーについて語り始めたら何時間にもなってしまいますよ(笑)。影響を受けた映画監督はアルフレッド・ヒッチコックやセルジオ・レオーネなど、何人もいますが、一番を選ぶなら黒澤明です。彼は僕にとって映画の“神”です。西洋映画のテイストも取り入れながら、あくまで自己流に変換し直しているところや、異なるジャンルの映画をかけ合わせて独自の作品にしているところに衝撃を受けました。好きな作品を挙げていけばきりがないですが、『天国と地獄』『七人の侍』『椿三十郎』などは何度も観ています。『ガンパウダー・ミルクシェイク』にもその影響は出ていて、主人公が自分の所属するべき場所を持たない“浪人”という点で、『用心棒』にも重なるところはあります。近年の日本の映画では、三池崇史、黒沢清の作品も大好きです。この取材の前にも今敏監督の『パプリカ』を観ていたのですが、少なくとも20回は越えていると思います(笑)」

 本作の冒頭は、黒いハットに黒ずくめの衣装を着たサムが銃を放つシーンから始まる。その衣装でピンと来た方もいるかもしれないが、このシーンは梶芽衣子主演『女囚さそり』シリーズへのオマージュだという。

「『女囚さそり』シリーズをはじめ、女性が暗殺者の作品はくまなくチェックいたしました。同じジャンルの作品を作る際、過去にどんな作品があったか理解しなければいけないと思いますし、大切にするべきだと思います。私が参考にした映画はカレンにも観てもらいました。観た人はみんな感じられるかもしれませんが、もちろん『キル・ビル』にも影響を受けています。私はイスラエル出身ですが、本作はアメリカ映画として製作しています。そして、撮影はドイツ、スタジオはフランスで、キャストの方々はアメリカの方々だけでなく、スコットランド、マレーシアなど非常に多国籍な方々が本作には参加しています。私は子供の頃からいろんな文化圏に触れて育ってきました。本作もまったく同じで、スタッフ・キャストはもちろん、先ほども話したように黒澤監督を中心とした日本映画の影響、ジャッキー・チェン作品、ジョン・ウー作品など、アジアのアクション映画の要素もふんだんに散りばめられています。タイトルの『ミルクシェイク』もいろんな時代、いろんな場所、さまざまな映画のインスピレーションを『シェイク』しているからなんです。自分というフィルターを通して、また新しいオリジナルの映画になっていたらと思っています。すべての映画人に感謝をしています」



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