観終わった後はダイナーへ、いやファミレスへ 『ガンパウダー・ミルクシェイク』に大満足
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、孤高の一匹狼よりも牙の抜けた群れた駄犬でありたい石井が『ガンパウダー・ミルクシェイク』をプッシュします。
『ガンパウダー・ミルクシェイク』
今はなくなってしまった新宿高島屋の中にあった映画館・テアトルタイムズスクエアで私がアルバイトをしていた頃の話から始めたいと思います。アルバイトにも慣れ始めた頃、印象的なヒットを記録した作品がありました。2008年に公開されたクリスティーナ・リッチ主演『ペネロピ』です。この作品、ジャンルで言えばファンタジーラブストーリー、日本の作品に例えるなら『イグアナの娘』的な、ある呪いにかけられた主人公のお話で、よくできたストーリーだったと記憶しています。
主人公にかけられた呪いというのが、生まれつき顔の一部、鼻だけが「ブタの鼻」になってしまうというもの。その呪いを解くため(受け入れるため)、主人公ペネロピが奮闘していくという物語です。ブタがキーポイントの作品ということもあり、売店ではさまざまなブタグッズを販売していました。このブタグッズ、映画オフィシャルの商品ではまったくなかったのですが、飛ぶように売れました。映画館隣のカフェで展開していたコラボドリンクもかなりの売上が出ていました。決して悪いことをしているわけではなく、売店チームの方の狙い通りなのですが、妙な後ろめたさのようなものを感じたのを覚えています。と同時に、映画に関連したものが欲しくなる、映画に登場したものが食べたくなる/飲みたくなるのは真理だなとまざまざと感じたものです。
変な前置きになりましたが、そんな思いを映画を観終わったあとにふと思い出したのが、『ガンパウダー・ミルクシェイク』でした。まず、タイトルがいいですよね。「ミルクシェイク」の甘美な響きは言わずもがな、そこに「パウダー」も乗っかり、柔らかさを出しつつ、「ガン(銃)」の重さを乗せる絶妙なブレンド。映画のあらすじだけを抜き出せば、まったく甘さはなく文字通り「ガン(銃)」の嵐なのですが、美術や音楽など、背景にあるものはポップで可愛いのです。映画の内容も構造も組み立て方にも、すべてにハマっている秀逸なタイトルだと思います。
殺し屋のサム(カレン・ギラン)が、とあることが理由でひとりの少女を守ることになり、自身が所属していた殺し屋集団と大乱戦を繰り広げる……というのが大まかなあらすじです。サムをはじめ映画に登場するほぼすべての女性は凄腕の殺し屋で、対して男性陣のほとんどは褒めるところがまったくないような人間たち。この極端すぎる構図もここまでくると爽快です。カレン・ギランを中心に女性陣がとにかく格好いいです。銃はもちろん、ナイフに、鋼鉄チェーン、二丁トンカチとあらゆる武器をそれぞれが見事に使いこなしていきます。モデルガンなどにはまったく興味を抱かない人生を歩んできましたが、本作を観た後に目の前にあったら思わず手にしてしまっていたと思います。それぐらい、彼女たちの武器との一体感が格好良く、真似したくなってしまう魅力がありました。