安達奈緒子「最後は希望を感じていただけるように」 『おかえりモネ』執筆を終えて

安達奈緒子、『おかえりモネ』執筆を終えて

 NHK 連続テレビ小説『おかえりモネ』が10月29日(30日土曜日は1週間の振り返り)に最終回を迎える。主人公・百音(清原果耶)が、「山」を知り、「空」を知り、「海」を知っていく中で、自分自身の、そして周囲の人々の心の傷を少しずつ癒やしていく様子が描かれてきた。誰もが愛すべき人間であった登場人物たち、そして丹念に丹念に物語を紡いできた脚本・安達奈緒子は全話を書き終えた今、次のようにその思いを語っている。

「2年以上、『おかえりモネ』という作品と向き合ってきたので、多少は解放感のようなものを味わえるのではと想像していましたが、書き終えた今のほうが、時間が出来たぶん四六時中このドラマのことばかり考えてしまって、『終わった』という感覚は今のところまだありません。そんな中で、この作品に携わってくださった方々への敬服のような気持ちがよりいっそう募ってきています。書いている最中は無我夢中ということもあり、物語に没入していましたが、これまでの過程を振り返るようになると、取材でお話をうかがったり、協力をお願いしたりした宮城の方々のお力はもちろんのこと、現場のスタッフや俳優の皆さまをはじめ、たくさんの人がこの作品に関わり力を貸してくださったことで、なんとかかんとか作り上げることができたのだと改めて強く感じています」

 続けて、安達は画面を通してキャスト・スタッフたちの思いに圧倒されたと振り返る。

「皆が限界まで何ができるかを考え、表現してくださった跡が画面にありありと現れていて、 ほんとうにみんなすごい、と、わたしが今いちばん、この作品の凄みに気圧されているような状態です。自分も考え得る限り考え、現時点で提示できるものはこれだ、というものを書いてきたつもりですが、それが携わってくださった方々の『思い』や『力』に見合うものだったのかどうか、冷静に考えられるようになるのは、放送が終わってしばらく経ってからだろうと思います」

 そして、本作のヒロインを務めた清原果耶のことを「信じ切って書いていました」と語り、「清原果耶さんがいてくれたからこそ表現できた物語」とその演技力を絶賛。

「演じていただけて本当に良かったと思っています。 百音は10代にして『当事者でありながら、当事者ではない』という難しい立場に立たされた女性です。たった15歳で強烈に抱いてしまった罪悪感を胸に刻みつつ生きねばならない若者の、しかも19歳から24歳という短い期間を演じることは容易ではなかったと思います。大人として成長していく、いちばん瑞々しく眩しいくらいに輝いている年頃を“痛み”を伴いながら生きる。しかもその“痛み”は他者から見て分かりやすいものではないので、自分の中に抑えこんでしまったりする。それでも出会った人たちと自身を照らし合わせていくことで、“痛み”と向き合い昇華させていくさまを、清原さんが緻密に、繊細に表現してくださいました。物語の中で、まるで実際に5年間を経たかのように、百音の顔が19歳と24歳でまったく違います。どうしたらこんなふうに顔が変わるように演じられるのだろうと思わず画面を見つめてしまいます。わたしはもちろんですが、視聴者の皆さまにとっても、これからもずっと目が離せない存在になっていくだろうと思います。『おかえりモネ』は清原果耶さんがいてくれたからこそ表現できた物語です」

 本作の背景には2011年3月11日に起きた東日本大震災がある。震災から10年を経た今、物語として描くことに安達はどんなことを考えていたのだろうか。

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