安達奈緒子「最後は希望を感じていただけるように」 『おかえりモネ』執筆を終えて
「東日本大震災を背景にドラマを描く、ということについては、おそらくこれから先もずっと考え続けると思います。正解は見つけられないと思いますし、正解を見つけようとすること自体が違うのではないかとの考えもあります。ですが『その人の苦しみは、その人でなければ絶対に理解できない』という大前提から始めて、話を聞き、考えて得た震災に対する『伝えたい思い』は提示すべきだろうと。チームにそれをお話しして、それぞれのお考えも聞きました。現場は最後の最後まで力を尽くしてくださいました。当然のことながら提示したものが、すべての人に受け入れられるとは考えていません。ご協力いただいている宮城の皆さまの思いもうかがいました。その上で、自然との共生や、“痛み”について描いてきたこの物語の帰結をどのように表現するかを決めました。百音と未知(蒔田彩珠)が出した答え、耕治(内野聖陽)さんと新次(浅野忠信)さんが出した答えに、それを託しています」
『透明なゆりかご』(NHK総合)、『きのう何食べた?』(テレビ東京ほか)、『G線上のあなたと私』(TBS系)など、数多くのドラマを手掛けている安達だが、約半年にわたる“朝ドラ”の脚本は本作が初。執筆を終えた今、改めて感じたものとは?
「『ゆっくり』『時間をかけて』表現してよい場は、今あまり残されていないように思います。一見して魅力的だと感じてもらえないと切られてしまうし、長いと最後までつきあってもいただけない。でもこの『朝ドラ』というものは、半年近く、なんとなくでもたくさんの方の目の端に入る可能性が高い。学校のクラスにはいるけど、あまり話したこともないし、なんか変な人っぽい、みたいな感じでずっとそばにいられたらいいなと思っていました。『ゆっくり』『時間をかけて』接してみたら案外味があるところもあって、一緒にいる時間 が今は楽しい、そんなふうに最後は思ってもらえたら嬉しいですし、やっぱり変なヤツだっ たし好きにはなれないけど、まあ、あの人の人生だしそれはそれでいいや、みたいに思って もらえても、それもありがたいと思います。視聴者の方々とドラマの中で生きる人たちが、 『ゆっくり』『時間をかけて』関係性を構築することを許してくれるのが『朝ドラ』であり、 やはりとても貴重な場だったと思っています。
最後にここまで作品を楽しみに観ている視聴者へ向けてメッセージを送った。
「ここまで観てくださって本当にありがとうございました。心から感謝しています。受け止めてくれる方がいなければ物語は成立しません。どんな受け止め方もあってよいと思います。ですが、やはりほんの少しでも、優しい気持ちや胸が熱くなるような感覚を抱いてもらえていますように、と願ってしまう自分がいます。誰もが以前よりも苦しい日々を過ごされている中で、最後は希望を感じていただけるように書いたつもりです。そしてチームの皆さまが、それをより力強く表現してくださっています。あと少しとなり、わたしはとにかく寂しくてたまりませんが、最後までおつきあいいただけると嬉しいです」
※安達奈緒子のコメントは書面より
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK