ドウェイン・ジョンソンはなぜ愛される? “スター俳優”に至るまでの紆余曲折

ドウェイン・ジョンソンはなぜ愛される?

 アナハイムのディズニーランドがオープンした時から存在するアトラクションを原作にした『ジャングル・クルーズ』。本作のように人気アトラクションに付与されたストーリーにさらなる肉付けを施し映画にするプロセスは、過去にも『パイレーツ・オブ・カリビアン』などで実行されてきた。いわばディズニーが自社の利を最大級に活かしたタイプの作品といえよう。ましてや近年、4DXなどの普及によって映画のアトラクション化が進んでいることを踏まえれば、まさに絶好のタイミングである。

 物語は1916年。ジャングルの奥深くに伝わる“奇跡の花”を求め、弟のマクレガーとともにイギリスからアマゾンへやってきた植物博士のリリー。彼女は陽気な観光船船長のフランクと出会い、冒険の旅へと出発するのである。もっぱら『インディ・ジョーンズ』や『ロマンシング・ストーン  秘宝の谷』といった王道の冒険活劇の様相を呈しながら、ジョン・フォードの『周遊する蒸気船』やジョン・ヒューストンの『アフリカの女王』といったクルーズ船映画の魅力も同時に保持する。こうしたタイプの作品には往々にして主演俳優のスター性は欠かすことができない重要な要素となり得るだけに、フランク役をドウェイン・ジョンソンが演じるのは適任だ。彼のスターパワーは、間違いなく本作のアトラクション感を高めてくれていると見える。

 この機会に改めてドウェイン・ジョンソンという現代ハリウッドを代表するスター俳優について掘り下げてみるのも悪くないだろう。アメリカで国民的な人気を誇るプロレス団体WWF(2002年からはWWEとなる)のスター選手として活躍していたドウェインは、『ハムナプトラ2 黄金のピラミッド』で悪役のスコーピオン・キング役として映画初出演を果たす。翌年には同役を主人公にしたスピンオフ作品が製作され、映画デビュー2作目にしてハリウッドメジャースタジオ作品で主演を張ることになる。このように稀なスピード出世を見せる一方で、そこから“スター俳優”になるまでにはかなりの時間を要したのである。

 2000年代にはゲームを原作にした『DOOM ドゥーム』や、スポーツドラマ『ギャングスターズ 明日へのタッチダウン』など、悪い作品ではないがいまひとつインパクトの薄く、俳優としてのイメージも定まらないような作品への出演が相次ぐ。もっともそれは、本来ドウェインのポテンシャルが生かされるような肉体的なアクション映画が当時ちっとも流行っていなかったことが大きな要因と言えるだろう。そこには1990年代に活躍したアクションスターのブームが低迷し、彼らの新作がこぞって低評価になったことも関係していると考えられる。

『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(c)UNIVERSAL PICTURES

 そうしたなかで2011年に『ワイルド・スピード』シリーズに乗り込むことができたのは、ドウェインの俳優キャリアにとって非常に大きなチャンスとなったことは言うまでもない。そもそもは青春スターであったポール・ウォーカーを主演にしたカーアクション×刑事ドラマの融合作品だった同シリーズが、シリーズを重ねていくごとにスケールを拡張し、いつの間にかアクション万博映画になることは予測外の出来事であった。昔から根強いカーアクション映画としての側面も相まって安定したシリーズ人気という下地の上に、ようやく肉体派アクションスターの活躍する場が用意されることになったのである。

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