単純なハッピーエンドで終わらないのが火曜ドラマ 『わたナギ』で考え直す他者との境界線

単純なハッピーエンドで終わらないのが火曜ドラマ 『わたナギ』で考え直す他者との境界線

 火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)は、これまで第1〜5話にかけて、まだまだ「家事が得意=女子力が高い」と言われる現代に、「家事は男女誰がやってもいい」という解放を見せてくれた。

 バリキャリウーマンのメイ(多部未華子)の元に現れた、謎多きハイスペック家政夫のナギサさん(大森南朋)。忙しく家事が苦手なメイの生活は、ナギサさんの登場によって潤いと余裕がもたらされた。それは、メイの母・美登里(草刈民代)と向き合う気力を生み、長年こじれていた母と妹・唯(趣里)との関係までも良好にするほど。

 母から娘へかけていた「やればできる子」が「呪いの言葉」になっていた、と言えた第5話は、まるで最終話のような雰囲気さえあった。栄養バランスも取れ、ふかふかの布団で眠り、仕事も絶好調。男女問わず、適材適所が大事! ということで、ハッピーエンド……とならないのが、火曜ドラマだ。

 第6話で描かれたのは、親しい関係になったからこそ見誤りがちな他者との境界線。「親しき仲にも礼儀あり」という言葉が古くからあるのは、きっと「仲良くなる」と「遠慮がなくなる」は同じようなタイミングでやってくるからだろう。

 メイは、もはや家族の一員とも感じられるナギサさんのプライベートが気になって仕方がない。特に、自分と同じMRだった過去があることを知るやいなや、その好奇心はさらに膨れ上がる。バリバリと仕事をこなしていたはずなのに、なぜ今は家政夫として働いているのか……。

 さっそく会社で採用された1on1コミュニケーションを口実に、いろいろと聞き出そうとするもあえなく失敗。それもそのはず、メイは相手が本音を語りたくなる空気を作るよりも、自らの意見でその場をリードしていくタイプだから。

 それでも部下たちのように、相手が話したがっている場合ならば、黙っていれば自然と相手の話に耳を傾けることはできる。だが、できれば話したくないと考えている相手の場合は、まず「この人に話したい」と思ってもらえるような関係性づくりの方が優先だ。

 なのに、メイはそれでも自分から突き進んでしまう。偶然見かけたナギサさんを尾行し、体調不良を装って自宅まで上がり込み、写真やカバンの中にあった手帳についてもグイグイと聞き出すメイ。すると、見たこともない険しい表情でナギサさんの心のシャッターはピシャッと下ろされてしまう。「早めに帰って、ゆっくりお休みください」というビジネスライクな笑顔が、より一層固く閉ざされた心を伺わせる。

 許可されていない領域に立ち入ることは、どんなに好意があたったとしても「土足で踏み込まれた」という認識になってしまう。受け取る準備ができていない状況でのやさしさは、どんなに良かれと思ってした行動でも、「押し付けられた」と感じてしまう。人は、好意や使命感といった自発的に湧いた感情を、正義と思い込んで疑わない節があるということ。
ナギサさんもまた、その使命感ゆえにメイの領域に土足で踏み込んでしまう。新たなミッションを背負い、さらに忙しさを増すメイを心配し、帰宅時間や食事や睡眠に関して干渉をし始めるのだ。「もうご在宅でしょうか?」「夕飯はお済でしょうか?」「どうかご無理なさらず、お早めにお休みください」「睡眠不足が1番の敵です」……鳴り止まないメッセージに困惑するメイ。

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