安藤サクラ、柄本佑、奥田瑛二、柄本明……日本映画・ドラマ界を牽引する華麗なる一族
朝ドラ『まんぷく』(NHK総合)も終盤となり、安藤サクラ演じる“福ちゃん”の笑顔を見る毎朝の習慣が終わってしまうことが寂しくてならない。毎年恒例の「キネマ旬報ベスト・テン」において、柄本佑、安藤サクラ夫妻が共に主演男優賞、主演女優賞を受賞し、雑誌『キネマ旬報2月下旬号』の表紙を2人で飾った(毎年主演男優賞と主演女優賞の2人がベスト・テン発表特別号の表紙を飾る)。出産と育児、そして柄本佑の母親である角替和枝の逝去と、プライベートでも激動の時期を過ごした2人。この2018年は、「映画・ドラマの顔」という言葉が相応しい、それぞれ次のステージに立った飛躍の1年であったことは間違いない。
柄本佑、安藤サクラの2人は、映画の出演のみならず、テレビドラマにおける功績も大きい。2人のみならず、錚々たる俳優一家である柄本家、奥田家の映画・テレビドラマにおける功績は計りしれない。昨年の優れたテレビドラマ『透明なゆりかご』(NHK総合)でもイッセー尾形と共に安価に中絶を請け負う老夫婦を演じた角替の、優しく温かい演技は記憶に新しい。また、2人が結婚する前の、2011年放送の朝ドラ『おひさま』(NHK総合)では、を柄本時生(柄本家次男)、角替、安藤が共演するという奇跡の組み合わせ。彼らが登場するだけで、その掛け合いに毎回笑いが止まらなかった。
現在、安藤サクラの父親、柄本佑の父親、という形で認識をされている方も多いかもしれない奥田瑛二、柄本明の2人だが、日本映画史に名を残す名優でもある。今回は、2人の極私的名作を何作かピックアップしたい。
語るべきものはたくさんあるが、私のベスト・柄本明出演作は4本ある。
『セーラー服と機関銃』(1981)
1本目は、薬師丸ひろ子主演、相米慎二監督による映画『セーラー服と機関銃』における黒木刑事役。彼は刑事としてヒロインに接近する男ではあるが、実は裏で彼女を脅かす最強の敵・三國連太郎と繋がっている、終始不気味な男。この時の柄本明は線が細くて色白で、今の柄本佑と少し重なる。
『ダブルベッド』(1983)
2本目は藤田敏八監督の映画『ダブルベッド』。大谷直子と石田えりもいいが、ちょっと猫背気味なカーディガン姿がたまらない、だらしなくていい加減な中年男を演じる柄本明の色気に尽きる。
『カンゾー先生』(1998)
3本目は今村昌平監督の映画『カンゾー先生』。患者思いでいつも走ってばかりいる柄本演じる町医者が、静かな狂気に取り憑かれていく様は見事だった。終盤、モンペが脱げたまま海を泳ぐ瑞々しい麻生久美子と、『まんぷく』とは一味違う艶っぽい料亭の女将を演じる松坂慶子という2つの“妖艶”を堪能できる映画でもある。
『巧名が辻』(NHK総合、2006)
4本目は、大河ドラマ『巧名が辻』(NHK総合、2006)の豊臣秀吉。浅野ゆう子演じる寧々を前にはしゃぎ、舘ひろし信長を追いかけひた走る。「百姓」「猿」という言葉がこれほど似合う秀吉はなかなかいない。そんな若い頃の可笑しさから、老いさらばえる終盤の悲哀までを演じきった。