『まんぷく』“老いの演技”が説得力を生む 安藤サクラと長谷川博己、夫婦の距離感の絶妙さ

『まんぷく』“老いの演技”が説得力を生む

 NHK連続テレビ小説の最近の傾向として、実在の人物がモデルとなり、激動の時代を乗り越えて何かを成し遂げたヒロイン、もしくは夫婦二人三脚の人生を描く作品が続いている。2014年からの作品をみると、10作品のうち、7作品が実在の人物をモデルにしている。例えば、『わろてんか』(2017年後期)のヒロイン・てん(葵わかな)のモデルは、大阪お笑いの礎を築いた興行師の吉本せいがモデルとされていた。

 『べっぴんさん』(2016年後期)で芳根京子が演じた坂東すみれは、子ども服メーカーの創業者のひとり坂野惇子。そして、『とと姉ちゃん』(2016年前期)では総合生活雑誌を創刊、出版社を立ち上げた大橋鎮子と初代編集長の花森安治をモチーフに描き、『あさが来た』(2015年後期)のヒロインのモデルとなったのは、生命保険会社を興し、日本初の女子大学の設立にも奔走した広岡浅子である。

 『マッサン』(2014年後期)は、日本で初めてウイスキー製造に取り組んだ亀山政春(玉山鉄二)と、彼を支えた妻のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)の物語で、モデルとなったのは竹鶴政孝とその妻であるリタだった。また、『花子とアン』(2014年前期)で吉高由里子が演じた花子は、「赤毛のアン」を翻訳した村岡花子がモデルとなっている。


 現在放送中の『まんぷく』(2018年後期)も、日清食品の創業者が誰かは知らなくても、インスタントラーメンのことを知らない人はいない。インスタントラーメンを開発までの苦労と、その人を支えた存在、夫婦二人三脚で激動の時代を乗り越えていく波乱万丈の人生はやはり見応えがある。

 いずれの作品でも、ヒロインやその周囲の人物たちは、実年齢とは開きがある役を演じてきた。役者によっては、10代で70代を演じることもあり、「無理がある」の声もあがることも少なくなかった。しかし、歴代の“老齢”演技の中でも、『まんぷく』の2人は屈指のハマり具合となっているように思う。もちろん、現在、長谷川博己は40代、安藤サクラも30代と、演じるキャラクターが実年齢に近いという点はある。だがそれ以上にキャラクターが年齢を重ねたからこそできる、“夫婦の距離感”を2人は絶妙に体現しているのだ。

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