『ラ・ラ・ランド』から『ファースト・マン』へ D・チャゼル監督が語る、宇宙環境の音づくり

監督が明かす『ファースト・マン』の音づくり

 「宇宙を題材にした映画」。このテーマで話をすれば、きっと各々のお気に入りの作品が飛び出すことだろう。ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』をはじめ、昨年製作50周年を迎えた『2001年宇宙の旅』、世代を超えて愛される『スター・ウォーズ』シリーズ、『インターステラー』、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、『不思議惑星キン・ザ・ザ』、『砂の惑星』など、挙げだすときりがないほど映画史に爪痕を残す作品が多数生み出されてきた。

 しかし一方で宇宙映画は、すでに様々なジャンルと掛け合わされてきており、語り尽くされたカテゴリーと言っても過言ではない。そんな中、新たな視点から一石を投じたのが『セッション』『ラ・ラ・ランド』でおなじみのデイミアン・チャゼルだった。

 現在公開中の映画『ファースト・マン』は、チャゼルとライアン・ゴズリングの『ラ・ラ・ランド』コンビが再タッグを組み、宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を描いた物語。ジェイムズ・R・ハンセンによる伝記『ファーストマン:ニール・アームストロングの人生』を基に映画化し、ゴズリングがニール・アームストロングに扮する。

 チャゼルは、本作の製作にあたり、「誰も観たことがないような宇宙の映画を作りたいという気持ちがあった」と語る。これまでの作品のほとんどは、宇宙に飛び立つことが当たり前かのごとく描かれてきたが、本作では夢のある宇宙とは程遠い“地上での苦痛”が延々と流れる。

 「宇宙開発競争が起きた1960年代の当時は、宇宙開発を何の問題もないように映し出していたから、それを反映したような映画が多いようにも思う。リスクがなくて、理想的で楽観主義的。宇宙飛行士はみんながスーパーヒーローで、宇宙船も技術の革新のような見せ方だった。月面に行ったことは、初めから約束されていた成功だと感じさせ、すべての挑戦を容易に乗り越えて手にした神話のように描かれている。僕たちも、そういう風に教わってきた」

 だが、本作で描かれるニールの人生は、長年多くの人々に植え付けられたイメージを覆すほど絶望の連続だった。幼い娘カレンの死や、嘔吐するほど過酷な訓練、仲間の死など、本当に月へ行けるのか不安になるほど苦難の日々が続く。なぜあえて苦しい部分を切り取ったのか。チャゼルは以下のように答えた。

 「月に行くなんて当時は狂気沙汰くらいの提案だったのに、これまでは、それにどのくらいの喪失と悲劇が伴い、どのくらいの努力の上で初めて手にすることができたのか、その代償はなんだったのかということが、あまり描かれてきていないと僕は思ったんだ。ニール自身も月面着陸の確率をフィフティ・フィフティだって言っていたくらいだ。歴史を知れば知るほど、なんて狂気じみた行為だったんだろうと感じたよ」

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